Z33をスポーツカーにするためのカスタムを考える

前回はファッションパーツではなく、エアロパーツの本来の効果を説明したのだが、アフターパーツは本来、明確に効果を狙って設計されている訳であって、スポーツ性能に振ったパーツはファッション性が有ったとしても、それは二の次の設計となっている。

今回は後付けメーターの説明になるが、これも、ひとたび間違えるとファッションパーツとして取り付けていると勘違いされるパーツになる。確かに年々演出や装飾のファッション性が高くなっていることは間違いない。しかし、後付けメーターの本質はそれが示す数値にある。

■後付けメーターは何のため?

そもそも車には必要最低限のメーターは付いているのに、後付けメーターを付ける必要性があるのか懐疑的に思っている人もいるだろう。だが、表示する数値の意味を理解すれば何のために付けるのか、その理由が見えてくる。

そもそも、車というのは電子制御無しでは動かないほど電子化が進んでおり、エンジンひとつを取ってみても大量のセンサーが埋め込まれており、そのセンサーが読み取った情報を元に燃料を調整してエンジン出力を調整している。

だが、これらのセンサーが読みとったデータは全く表示されない。Z33では油圧が表示されているが、中期までは水温、後期は油温もセンサーが読み取っているため、簡単にODB2コネクタから情報を読み出せるのだが、あえて表示していない。

これには理由があるが、1つはセンサーの情報を表示しても、数値の持つ意味を理解できなければ混乱を招くだけであるという理由によるもの。もう1つは、設計の段階で、一般のドライバーが使用する環境では限界を超えないように設計をしているため、ドライバーが随時センサーの情報を見て走行状態を調整しなくても良いからという考えからだ。

だが、一般のドライバーが使用する環境ではないサーキット走行や、パワーアップチューニングにより本来の設計とは異なる環境に置かれた場合、車の性能が限界を超えてしまうことがある。

特にZ33はエンジン温度が高く、スポーツ走行やパワーアップチューニングの状態により、水温や油温の管理は厳しくしておかないといけないのだが、その指標となる温度は後付けメーターが無いと表示ができない。

これがないと、今の走行環境で過熱気味なのか適切なのか、場合によっては冷却過多なのか・・・。全く状況が分からないし、冷却を強化するために入れたアフターパーツが正常に動いているのか、期待した性能を発揮しているのか計れない。

それ故、チューニングを施したスポーツカーには後付けメーターが重要なパーツとなるのだが、現車セッティングをする際にも車の状態を確認するために後付けメーターを使用することがある。

Z33では、初期状態で取り付けられているセンサーのデータをODB2から読み出すことができるため、ROMチューンの現車セッティングに使用することもある。これは、個人でも簡単にセンサーの情報を読み出して表示することができるものが販売されているため、ODB2に対応した後付けメーターを使うのも手だ。

パワーアップチューニングを行う場合は、最低でも水温はしっかりと確認できるようにしておき、必要に応じて油温などの表示ができる後付けメーターの導入を勧めたい。

なおチューニングによっては、必要となる情報が多くなることもある。水温、油温と油圧は後付けメーターの基本セットと思っているが、後付けメーターにはさらに以下の物がある。

・バキューム計
NAエンジンの吸気圧(負圧)を計測

・インテークマニホールドプレッシャー計
バキューム計にRAM圧測定用に正圧を追加

・ブースト計
過給器付きエンジンの過給圧を計測(ブーストアップの指標に使用・圧が高すぎるとタービンが破損)

・A/F計
空燃比(空気と燃料の混合比率)を計測

・排気温計
排気温度の計測(排気温度が高いとメタルキャタライザーのメタルが溶け、ターボ車はタービンが損壊する)

・燃圧計
燃料の圧力を計測(燃圧が低いとインジェクターの燃料噴射量が下がる)

これら全ての後付けメーターが必要になるわけではないが、パワーアップチューニングで大きなパワードを出すために突き詰めていくと、後付けメーターが表示する数値が指標として必要となってくるため、センサーからの情報が乏しい車種では次第に数が増えていくこともあるだろう。

幸い、Z33はノーマルの状態で取り付けられているセンサー情報である程度車の状態を確認できるため、ライトチューニング程度の現車セッティングでは、後付けメーターの代わりにODB2コネクタからPCにセンサー情報を送り、記録したデータを分析してセッティングする場合もある。

■託すという選択肢

カスタムで出てくる「チューニング」という言葉は「調律」という意味だが、その意味の通り全体のバランスを調整することになる。スポーツカーのカスタムであれば、全体の性能をバランス良く上げていくということになる。

そのため、何のためにそのパーツを装着するのか。何のためにその設定にするか。明確な理由と根拠を元にパーツを選定しないとバランスが崩れてしまい、かえって性能が低下してしまうことがあるのがチューニングの難しさだ。

しかし、これはとてつもなく難しい。ごまんとあるパーツの中から最適なものを探しだすことや、最適なパーツの組み合わせを決めるというのは、経験がものをいってくる。

どれだけ優れていると謳ってあるパーツも、実際に使ってみないと分からない部分も多く、多数のアフターパーツを取り付け、その効果を検証するのは時間も予算も無い個人には無理というものだ。そこで、方向性を決めてチューナーにチューニングやカスタムを託すという方法がある。

チューナーは数多くの車両にカスタムパーツやチューニングを施しているという経験の他にも、業界の情報網により一般の人が知らない知識を持っているが、特定の車両を専門で見ているカスタムショップであれば、経験や知識はなおさら豊富だ。

自分でできる範囲は自分でやる。しかし、分からない部分はチューナーに頼ることで、愛車はより自分らしさを手にしていくことができるだろう。

だが、パーツがピンキリならチューナーもピンキリだ。パーツを取り付けたら終了で後は知らないというような適当なことをするチューナーもいるため、まずは、信頼ができるチューナーを探すことが第一歩だ。

そして、そのチューナーが求めている方向性が自分の方向性と一致しているなら、それは願ってもないことだ。自分の理想の状態を伝えれば、きっと自分の思ったとおりのZ33に仕上げてくれるだろう。

■終わりに

全9回におよぶ「Z33をスポーツカーにするためのカスタムとは」特集も今回で終わりとなる。素人ながらに解説してみたが、私としても理解ができていないところもあり、勉強をさせてもらう良い機会となった。

なお、この特集では、さわりの部分を紹介しただけで、それぞれ、カスタムの内容やパーツには奥の深い部分があるのだが、ここで紹介するにはあまりにも長すぎて省略している。それらについては、カスタムやパーツの選定時に掘り下げて紹介したいと思っている。

なお、記事を書いていてバケットシートとクラッチについて説明するのを忘れていたので、これも別途記事としてまとめ上げて公開したい。