Z33をスポーツカーにするためのカスタムを考える

前回は冷却の大切さを説明したが、Z33をスポーツカーにするためのカスタムもよいよ終わりに近い。しかし、大切な何か抜けているように感じているのなら、それは正常な判断だ。そう、スポーツカーといえばスポーティーなアルミホイールはカスタムの定番だ。

だが、スポーツ走行向けのアルミホイールはけっしてファッションパーツなどではない。スポーツ走行向けのアルミホイールにはスポーツ走行に最適な性能を持っていることを知って欲しい。

■ホイールを変えるタイミング

ホイールと言えば、ファッションパーツとしての意味合いが強いパーツであることは否めない。しかし、ホイールが変わることにより、スポーツ走行においてどのようなメリットがあるのかを理解すれば、ホイールの大切さと変更のタイミングを見極めることができるかもしれない。

そもそも、スポーツ走行向けのホイールは何が違うのかというと、頑丈な材質を使うため、軽くても純正のホイールやそれ以上の剛性を持っている。

この材質は、一般的にはアルミが使用されるが、鋳型に流し込んで製造する鋳造アルミホイールと違い、スポーツ走行向けのアルミホイールは成型時に圧力をかけて製造する鍛造ホイールが採用されている。

この鍛造工程により、同じ質量でも強度が抜群に上がることになるが、その分製造コストが上がるため、鍛造アルミホイールは高価なものばかりだ。

だが、この軽い鍛造アルミホイールに変更することにより、停止からの加速や、足回りの動きが大きく変わることになる。それは、慣性の法則によるものだ。

物には必ず慣性が働いており、停止した物は停止しようとし続け、動いている物は動き続けようとする力が働く。だが、慣性は質量が大きいほど大きく働く特性がある。

例えば、水がいっぱいに入った500mlと2Lのペットボトルがあったとして、そのペットボトルを持ち上げる際、どちらの方が力を入れずに持ち上げることができかと言えば、軽い500mlのペットボトルになるのは言うまでもない。

では、同じ位置から両方のペットボトルを落として受け止める際に、受け止める力が必要なのはどちらかと言えば、当たり前だが2Lのペットボトルになる。

この2つの差は慣性の法則によるもので、質量が大きいほど、停止している状態から動く、動いている状態から停止するために大きなエネルギーを必要とする。すなわち、重いホイールほど動きが鈍く、軽いホイールは動きが素早いということになる。

では、ホイールの動きが素早くなったとして、それがどのようにメリットに繋がるのかというと、主に2つのメリットが存在する。

1つ目は停止状態からの加速だ。軽いホイールは停止した状態から、転がり始める際に必要なエネルギーは小さくて済むため、停止からの加速が改善される。もちろん、加速する際にもこのメリットが働くのだが、恐らくその効果は停止時からの加速と比較すると感じにくいものになる。

2つ目は、路面への追従性が改善する効果だ。路面は絶えず凹凸しているため、サスペンションにより衝撃を吸収しているが、そのサスペンションに衝撃を伝えているのは他でもない、路面に触れるタイヤとそれを保持するホイールだ。

ホイールが軽ければ、路面の凹凸を踏んだ瞬間、ホイールが上下に動き始める時とサスペンションに押されて元に位置に戻ろうと反発する時に必要なエネルギーが少なくて済む。

そのため、路面の凹凸に反応して足回りが素早く動くため、路面への追従性が増す効果を得ることができるといわけだ。

先ほどのペットボトルの例だと、両方のペットボトルをダンベルのように上下に動かして比較すると分かりやすいだろう。どちらが上下しやすいかといえば、それは軽い方だ。

これらの結果からすれば、スポーツ走行向けに軽いホイールに変えるタイミングはいつでも良いということになるのだが、いくつか注意がある。

■ホイールを替える際に注意すべきこと

最初はビッグローターを入れる場合だ。ビッグローターはブレーキ強化とサスペンション編で書いたように口径が大きいため、ホイールとの相性がシビアな点が問題になる。そのため、ビッグローターが干渉する場合は別のホイールに交換を余儀なくされる。

もし、ビッグローターの導入を考えているのであれば、ホイールとの相性を事前に調べてから購入した方が良いだろう。

次は、タイヤのトレッド幅を広げる場合だ。タイヤのグリップ力が上がれば、ブレーキもコーナリングも加速も本来の性能を発揮できる。そのためグリップ力を上げるため、タイヤのトレッド幅を広げて接地面積を増やす手法があるが、この際にホイールの交換が必要になる場合がある。

ホイールにはホイール幅に対して適正となるタイヤのトレッド幅がある。適正値を超えたトレッド幅のタイヤを装着するとタイヤの性能を発揮できないばかりか、空気が抜けてパンクするといったトラブルの原因になるためお勧めはしない。

幅広のホイールに幅が小さいタイヤを装着する引っ張りタイヤや過度なキャンバー角もそうだが、ファッション性を重視した扱いは、パーツの寿命を縮めるだけでなく、スポーツ走行においては性能の低下を招くだけだ。

今回は、ファッションパーツとしてみられることが多いアルミホイールの違った一面を見ることができたかもしれない。次回もファッションパーツとしてみられることが多いエアロパーツを解説していく。