Z33をスポーツカーにするためのカスタムを考える

前回は、パワーアップチューニングの指標をトルク重視に決め、まずはライトチューニングから始めようという話で終わった。今回はその続きになるが、ライトチューニングの基本となる各パーツを少し掘り下げて説明していく。

前もって説明したが、今回は多岐にわたる説明で長文になっているので、休み休み読んでもらいたい。

■排気系とは

排気系とは、文字通りエンジンから出る排気が通るパーツのことを総称している。この排気に係わるパーツを交換し、素早く排気ガスを排出して吸気を妨げないようにすることがパワーアップチューニングにおける排気系のアプローチだ。

排気は騒音や公害になる成分に厳しい規制が設けられているため、直接的な規制が無い吸気と比べると、メーカー側が規制を守るために安全マージンを多めにとっていることもあり、排気効率はそれほど重視されていない。そのため、吸気系よりも排気系から先に交換する方が効果を得やすい。

とはいえ、規制が厳しいのが排気系。基準を超えて騒音が出るものや、排気ガスの成分が基準を超えて排出される場合は整備不良となり、公道の走行は認めらない。

基本的に、排気効率を上げるパーツほど騒音は大きくなり、排気ガスの浄化能力は薄れていくため、リーガルチューニングを心がけるのであれば、規制値のなかでいかに排気効率を上げるかというアプローチを取ることになる。

交換の順番は個人の好みもあるが、個人的にはマフラー側からエンジン側へ向かって交換するのが私の流儀だ。

■エキマニ(エキゾーストマニホールド)

では、Z33の排気系がどのような構成となっているのか説明しつつ、そのパーツの特徴を解説していく。

Z33の場合、エンジンから出た排気ガスは、エンジンの左右のバンクからエキマニ(エキゾーストマニホールド)を通り、触媒を通過し、Y字パイプ(フロントパイプやセンターパイプとも呼称しているものもある)で1つにまとめられ、マフラーを経由して大気に放出される。

エキマニは左右の各バンク(片方3気筒)の排気を1つにまとめる役目を担っているが、3つのパイプは長さが異なっており、排気ガスが干渉を起して排気効率が落ちる。

このエキマニを等長、さらに口径を拡大することで、排気の干渉を抑えて排気効率の向上を狙うのが等長エキマニというパーツになる。

なお、後期のVQ35HRは、スペック上では等長エキマニとなっているが、実測では僅かに不等長ということが発覚している。

■メタルキャタライザー(スポーツ触媒)

触媒は、公害を防止するために排気ガスの公害成分を浄化する装置になるのだが、純正の触媒は浄化効率を重視しているため、排気効率はとても悪い物になっている。

レースカーではレギュレーションにもよるが、排気効率を重視して触媒を使わない触媒ストレート(レス)にすることもあるのだが、公道では排気ガスの排出基準があるため、触媒を外して公道を走行することは許されていない。

そのため、排気効率を向上させるためにメタルキャタライザーというスポーツ触媒を使用する。このメタルキャタライザーは排気効率を重視しつつも、排気ガスの浄化も基準に適合するように設計されている。

メタルキャタライザーは高価なパーツだが、排気系の中で排気効率の改善に格段の効果が見込めるので、可能な限り交換したいところだ。

なお、メタルキャタライザーとエキマニについては、排気の熱で溶接が割れる。メタルキャタライザーは熱でメタルが溶けることもあるため、耐久性は純正に比べて劣る。高価ではあるが、ある程度消耗品と割り切っておいた方が良いだろう。

■Y字パイプ(フロントパイプ・センターパイプ)

Y字パイプはフロントパイプやセンターパイプとも呼ばれているパーツで、その名が示すようにYの形をしている。

しかし、排気効率を考えるとより直線的な形状が良いため、社外品の多くはなだらかな角度で2つの触媒から出てきたパイプを1本に集合させている。

また、排気系は高熱に晒されるためパーツが伸び縮みしやすく、溶接箇所に力が加わりクラックの原因になることもある。そのため、力を逃がすために逃げとしての機能を持ったものも多く有り、耐久性を重視するのであれば、その点も加味したいところだ。

■マフラー(リアピース)

最後はマフラーになるが、ここはテール部分が外部から見えるため、ある意味ファッションパーツを兼ねているパーツともいえる。

そのため、音や音質、デザインを重視したものも多く、スポーツ走行向けに排気効率を向上させ、性能を確実にアップさせるスポーツマフラーの割合はそれほど多くないのが現実だ。

また、排気系のパーツは交換するほど排気効率と共に騒音も上がってしまうため、排気系のパーツをごっそりとスポーツ系のパーツに交換した場合、組み合わせによっては騒音が規制値を超えることもある。

マフラーのみの交換で終わる場合は良いが、それ以外の排気系パーツを交換する予定があるのであれば、静かめのスポーツマフラーを選択しておかないと、排気系のパーツを再び交換することになるかもしれない。

なお、マフラーによってはエンジンの左右のバンクを独立して排気するフルデュアルマフラーや、触媒以降全て交換となるものも中にはある。チタン製のものは軽量化にも貢献するが値段はそれ相応にするので、間違いの無いチョイスをしたいところだ。

■吸気系

NAエンジンの場合、吸気によるパワーアップは過給器エンジンほど劇的な効果は見込めない。しかし、排気系の強化をしたのであれば、ある程度の効果は期待できるため、優先度は低くても吸気の効率は上げておきたい。

吸気系については、大気が入っていく順番にエアクリーナー、サクションパイプ、スロットル、サージタンク、インマニ(インテークマニホールド)となる。

■エアクリーナー

エアクリーナーは大気中のゴミやチリを絡め取り、エンジン内部にダメージが入る要素を極力排除する機能を担っている。

当然、大気の浄化能力が高いほど吸気効率は落ちるため、吸気効率を上げるためには浄化能力をある程度犠牲にして効率を上げることになるのだが、吸気効率がとても良いオープンタイプのエアクリーナーは砂やカーボンがエンジン内部に入りシリンダーやピストンリングを削ってしまう。

また、ROMチューンで吊るしのデータを使う場合は、オープンタイプのエアクリーナーだと吸気温度の変化に対応できないものや、吸気効率が良すぎて燃料が薄くなり過ぎるためNG扱いのものもある。そのため、Z33では、純正交換タイプの高効率エアクリーナーで十分という意見も多い。

■サクションパイプ

サクションパイプはエアクリーナーが吸い込んだ大気をスロットルまで運ぶパイプになる。

このサクションパイプ内部の空気抵抗を落とし、場合によっては径を拡大して吸気効率を上げることが目的になる。

■スロットル

スロットルはエンジンへの吸気量を調整してエンジン出力を調整するパーツになる。吸気も排気もパイプの径が大きくなると効率が上がるため、スロットルの口径を拡大したビッグスロットルに交換することで吸気効率の向上を狙うことになる。

ビッグスロットルは純正パーツと互換性があり、取付けに際して特に加工は必要ないが、Z33の場合、ビッグスロットルに交換するとECUの学習機能の範囲では対応しきれず、アイドリング時にエンジンの回転数が上下するハンチングが発生する。

ポン付けが可能なパーツだが、ハンチング対策を事前に確認して取付ける必要があるので要注意。

■サージタンク・インマニ

サージタンクは各シリンダーへ大気を均等に送り込むための空間で、大気はサージタンクロアコレクター、インマニを通過して各シリンダーに混合気が入る。

Z33のVQ35DEの場合、サージタンクはエンジンのアルミのカバー上部分になる。下部分はサージタンクロアコレクターが取付けられており、サージタンクロアコレクターがサージタンクから均等に大気を吸い込みインマニへと吸い込まれていく。

インマニはサージタンクロアコレクターから伸びる管になるが、VQ35DEではインマニは途中で分割されているため、バルブ手前まで交換する事ができない。

サージタンク・インマニの交換も吸気効率の向上を狙ったものとなるが、アフターパーツは一体型となっているものばかりとなっている。

なお、パーツによってはポン付けできても燃調が大きく狂ってまともに走行できないものもあるため、パーツによっては現車セッティングを同時に行う必要がある。

■ROMチューン

車は年々電子化が進んでおり、エンジン制御も例外では無い。電子制御を全く使わず動いていたエンジンは、今やコンピューターが制御しないと動かないほど電子制御化が進んでいる。そのため、エンジンを制御するコンピューターであるECU(ECMとも呼ぶ)のROMデータを書き換えるだけでエンジンの特性が変わってくる。

このデータは、メーカーが、排ガス規制、耐久性、騒音、燃費、気候、環境性能といった数々の条件を考慮した上でセッティングされているため、パワーアップチューニングの視点から見るとパワー重視に振る余地が大きく残されている。

従って、車両がノーマルの状態でもある程度はエンジンの特性をスポーツ走行向けに再セッティングできるのだが、吸排気のパーツを取り替れば取り替えるほど、再セッティング時の伸び代も大きくなる。

また、ROMチューンではパワーアップだけで無く、スピードリミッターのカットやレブリミットの変更、冷却ファンの動作といったECUが制御している項目を変更することも可能だ。

このROMチューンは、「吊るし」と「現車セッティング」の2つのメニューが存在する。

吊しは、ある程度のパーツ交換を想定して作ってあり、吸排気の交換状況に応じて違いはあるものの、マフラー交換や触媒以降交換といったザックリとした条件に合わせて製作しているデータになる。

そのため、トラブルにならないように点火時期等を調整して安全マージンを多めに取っており、場合によっては思ったほどの効果が出ず、最悪パワーダウンする可能性すらある。

しかし、Z33ではECUをショップに送付するだけでデータを書き換えてくれるため、近くにチューニングショップが無い場合でも書き換えが可能になるメリットがある。しっかりと実績を出しているショップなら吊しのデータでもパワーアップが見込めるだろう。

現車セッティングはその名の通り、その車両に合わせて微調整されたデータをセッティングしてくれる。

これは、実際に車両に取り付けたセンサーなどで状態を把握して、その車両の状態似合わせて専用のデータを作り上げることになる。そのため、車両をショップに持ち込む必要がある。近くにチューニングショップが無い場合は厳しいかもしれないが、確実にパワーアップが見込めるため、可能な限りROMチューンは現車セッティングをしたいところだ。

なお、ROMチューンでは性能が大きく変わらないハイカムや低圧過給チューンといったレベルでも対応できる柔軟性がある。しかし、その先を目指すならサブコンやフルコンといったECU書き換え以上の領域となる。

■ライトチューニングの先へ

ライトチューニングを超えた先に、エンジンのパワーを大幅に上げるチューニングが待っている。過給器チューンとメカチューンだ。

両者のパワーアップチューニングについてはアプローチが異なるものの、原則は変わらない。パワーアップチューニングとは極端な話、いかに燃料を多く燃焼させることができるかが肝になるからだ。

過給器チューンでは大量の大気を過給器でシリンダーに送り込み、1回の燃焼でどれだけ多くの燃料を燃焼させることができるかというアプローチであり、特性としてはトルクを増して瞬発力を強化させる傾向が強い。もちろん、トルクの上がり具合が大きいため、馬力もそれ相応に上がっていく。

Z33はNAなので、過給器チューンはターボチャージャーかスーパーチャージャーを取り付けることになるが、過給器付のエンジンを過給器チューンする場合と比べると、NAエンジンを過給器付にするハードルは高い。

対するメカチューンでは、エンジン内部のパーツを交換又は加工してエンジンそのものの性能を上げていく。

ポートを研磨して拡大、ハイカムでバルブのリフト時間を延長して大気の入り具合を改善する。シリンダーの圧縮を変更する。シリンダーを削りオーバーサイズピストンを組み込んで排気量を上げる。ピストンストロークを変更する。鍛造パーツを組み込み最高回転数を上げる等々、多岐にわたるチューニングメニューが存在する。

単純にパワーを上げたいのであれば過給器チューニングが手っ取り早いし、費用対効果の点でも有利になる。しかし、過給器チューニングはエンジン特性がガラリと変わることもあるので、NAエンジンのフィーリングを重視する場合はメカチューンを選択するのも有りだろう。

なお、Z33では過給器チューニングはエンジン内部に手を加えない場合ならプラス50~70馬力。メカチューンはプラス~50馬力が1つの指標となる。これ以上を求めるならば、燃料系を強化した過給器チューニングで100~150馬力。過給器チューニングをベースにメカチューンの組み合わせではさらにこの上を目指せるが、ボディやブレーキ、冷却も合せて強化しないとパワーがあっても扱いきれないため、莫大な予算が必要となるのは言うまでもない。

パワーアップチューニングの世界では1馬力1万円という相場のようなものがあり、予算的な意味でもライトチューニングの先にあるハードルは高い。しかし、逆に言えばコストさえかければ車は何処までもパワーアップするということでもある。

もっとも、私にはそこまで予算はないので、ライトチューニングが一通り終わった段間で物足りなければ、ブレーキを強化したうえで、過給器チューニングで350馬力、トルク40kg・m程度を目指すことを検討することにしている。

今回は相当長くなってしまったが、パワーアップチューニングの世界は奥が深いだけあってさわりだけでも長くなってしまった。次回は冷却編になる。