Z33をスポーツカーにするためのカスタムを考える

前回は「曲がる」「止まる」を強化するためにブレーキとサスペンションの話をしたが、まだまだ下地を固めていくカスタムは続く。スポーツカーのカスタム定番であるパワーアップチューニングに入るには、まだまだ足りないものが多いのが事実なのだ。

今回は、「走る・曲がる・止まる」の3つの要素を担う大事なパーツであるタイヤの話と、駆動系パーツのLSDについて解説していく。

■ハイグリップタイヤ装着

ブレーキの制動力を上げてもタイヤが地面に食い付いていないと車は減速できないし、サスペンションを交換してコーナリングの速度を上げても、グリップ力が弱いとコーナリングでグリップが抜けて外側に飛び出るので危険だ。

パワーアップチューニングによりトルクが向上しても、そのトルクを受け止めることができないタイヤは空転して、路面を力強く蹴り出すことはできない。

このように、タイヤは「走る・曲がる・止まる」の全ての要素を受け止める重要なポジションを担っているため、決して疎かにしてはいけない。

スポーツ走行をするのであれば、ハイグリップタイヤを履くことは基本となるが、ハイグリップタイヤは路面への食い付きが良い分摩耗も早い。また、路面にしっかりと食い付くということは、路面からの影響を思い切り受けてしまうということでもある。

轍といった路面の凹凸に敏感に反応して、ステアリングを取られることもあるうえ、路面が濡れていると、一般的なタイヤ以上に滑りやすい傾向があるものもあるため、慣れない内は無理をしてはいけない。

トルクの太いZ33は、タイヤに掛る負荷も大きいため、ハイグリップタイヤに交換するだけでは満足できない場合も出てくるかもしれない。その場合は、ブレーキの箇所でも説明したように、ホイールのリム幅が大きなホイールに交換したうえで、トレッド幅が大きなハイグリップタイヤに交換する。

こうすることで、タイヤの接地面積が拡大してグリップ力は更に強化される。

なお、ノーマルの状態に近いZ33でもスポーツ走行がしたいのであれば、ブレーキパッドの交換後に装着しておくと良い。安全を買う意味でも、ハイグリップタイヤを装着しておいた方が安心して攻めることができるし、ノーマル状態の限界を知る意味でも良い経験になる。

■LSD交換

車にはデフという差動装置が装着されている。このパーツは、車が曲がる際に発生する、左右の車輪の回転差を吸収する装置で、車には必須のパーツとなっている。

このデフは、タイヤが空転すると、空転する側にパワーを集中する特性があるため、コーナリングで内輪への荷重が軽くなり空転しはじめると、空転する側にパワーが集中してしまい、立上がりの加速が鈍くなる原因となる。

そこで、一定以上のトルクが掛るとデフの差動機能を制限し、内輪と外輪両方に適切にパワーを分散する機能をもったLSDがスポーツ走行では重宝されるのだが、Z33にはLSDが標準装備されている。

このLSDはいくつか種類があり、Z33ではビスカスタイプのLSDが装着されているが、メンテナンスが軽微な反面、効き具合はマイルドなため、スポーツ走行を重視する場合は効きの良いLSDに交換することが多い。

しかし、効き具合が強い機械式LSDは動作音や挙動変化が大きく、デフオイルの交換を頻繁に行なう必要があるため、待ち乗りが多い場合は効き具合をある程度犠牲にしてでも、メンテナンス性や快適性を損なわない方向を検討するほうが良いだろう。不満を感じるまでは、あえて交換しないのも手だ。

なお、Z33はリアデフのオイル量が少ないため、ハードな走行をするとあっという間に油温が上がりデフオイルが吹いてしまう。走行シーンによるが、デフオイルが吹くような使い方をするなら、クーリングフィン付のデフカバーやデフクーラーの導入を同時に検討することになる。

次回は、カスタムのなかでも刺激的でスポーツカーの定番カスタムであるパワーアップチューニングの解説に入る。