VQ35DE

車の性能を測る上で大きな指標となるのが馬力だ。だが、馬力はカタログ値と実際の計測値が乖離していることは決して珍しくない。

Z33はNA(自然吸気)エンジンだが、NAエンジンの場合は計測値が低めに出ることが多く、ターボエンジンは高めに計測値が出やすい傾向にある。

では、実際にZ33をパワーチェックして出ている数値はどうなっているのか、ネットの情報を元に私なりの見解を出してみることにしてみた。

■Z33のカタログ馬力と実測馬力

Z33は製造された期間により前期・中期・後期型に分けられるが、全てカタログに掲載されている馬力が異なっており、後期型になるほど馬力が向上していく。

・カタログ値
前期(VQ35DE)280馬力
中期(VQ35DE)294馬力
後期(VQ35HR)313馬力

では実測値ではどのようになるかというと、実は正確に測れた事例は見たことがない。と言うのも、スピードリミッターが作動して正確に測れないためだ。

Z33では5速でパワーチェックをすることになるが、約5千回転でリミッターが動作してエンジンを最高回転まで回しきれない。そのため、リミッターが動作する条件では正確な数値は出てこない。

以下の実測値はあくまでもこの程度は出ている、もしくは、出るだろうという実測からの予想値なので参考程度に留めておいて欲しい。なお、この数値は補正後の数値となる。

・実測値
前期・中期(VQ35DE)230~240程度(リミッター有)
260~270程度(リミッター解除時予想値)
後期   (VQ35HR)280~290程度

上記のとおり、NAエンジンの実測馬力はカタログ値を超えることは珍しい。これには様々な条件が係わっているため複雑なのだが、カタログ値と計測値が異なる要因について、いくつかの原因を記載しておくので興味がある人は引き続き見てもらいたい。

■何故カタログ値と実測値は乖離するのか?

カタログ値と実際の計測値の馬力が乖離する主な原因は、以下の要素によるところが大きい。今回は各要素についてそれぞれ説明していく。

・エンジン組立精度
・大気の密度
・計測機器の差
・経年劣化やメンテナンスの差
・燃料のオクタン価
・スピードリミッター
・自主規制

・エンジン組立精度によるもの
エンジンは工業製品のため、ある程度精度に差が出てくるものだ。同じモデルの車両を同じ環境で計測して数値が大きく異なる場合はこの要素が大きいと予想される。

エンジンは数多くのパーツから成っているが、パーツ1つ1つの精度や、それらを組み合わせた際のクリアランスやバランスは細かく見ればエンジン1つ1つ差が出てくる。

また、世の中には人の手で組み立てる行程が多いエンジンもあるが、そのようなエンジンでは組み立てに係わった人の技術の差がエンジン出力の差に繋がることも珍しくない。

・大気の密度によるもの
エンジンの出力をあげるには燃料をいかに大量に燃焼させるかが肝となる。だが燃料だけ大量に吹いても燃焼はしない。燃焼には酸素が必要だからだ。

では、酸素はというと大気中に約21%存在している。その酸素をたくさん取り込めば多くの燃料を燃焼させることができる。

しかし、大気の密度は絶えず変化する。大気は高度によって密度が変化するし、気圧の変化でも変わってしまう。そのため、同じ体積から得られる酸素の量も大気の密度により変化する。

簡単に説明すると、大気中には酸素以外にも様々な気体が含まれているが、それら全てをボールと思って欲しい。そのボールのサイズは高度が低い(気圧が高い)ほど小さく、高度が高い(気圧が低い)ほど大きくなるが、ボールは大きさがどれだけ変化しようとも質量は変わらない。

大気の特性

同じ箱にボールを入れた際に、より多くのボールが入るのはどちらか?というと答えは高度が低い(気圧が高い)ほどボールが小さいため数多く箱に入る。

酸素の割合

そのボールの内21%が酸素となるのだが、酸素の重量が多いのはどちらかといえば、あたり前だがボールが小さいほうだ。なお、箱はエンジンのシリンダーと考えてもらえると分かりやすいと思う。

この特性により、全く同じエンジンでも高度や気圧の差によりエンジン出力が異なってしまう。

Z33はNA、すわなち、無理矢理大気を押し詰めることはせず、エンジン内部のピストンにより発生する負圧のみで吸気を行なう。そのため、事前に大気を圧縮してエンジンに供給するターボエンジンとは違い、大気の密度による影響を受けやすい。

しかし、ターボエンジンも環境によりエンジン出力が変わる。これは熱による要素が大きい。

先ほどのボールの説明では高度によってボールの大きさが変わると説明したが、熱によってもボールの大きさは変化する。

熱ければボールは大きくなり、寒ければボールは小さくなる。ターボエンジンのシステムに冷却用のインタークーラーが付いているのは、タービンが大気を圧縮することで発生する熱により膨張した大気を冷却する効果を狙ってのものだ。
※インタークーラーの冷却効果はノッキング対策としての側面もある

ターボエンジンについての話となったが、NAエンジンも熱によるエンジン出力低下は例外ではない。ターボエンジンのように事前に大気を圧縮しない構造のため、高度、気圧、気温による変化を受けやすく、エンジン出力はターボエンジンと比較して変化しやすい。

もし、出力を最大限に出そうと思うのであれば、寒い時期に海抜が低い地域に高気圧が近づいた際パワーチェックをすれば大きな数値が出ることになるが、パワーチェックは気温や大気圧による補正込みで馬力を計算して出してくるため、補正後の馬力では大きな差は出にくくなっている。それでも、寒い時期は幾分か高い数値が出るようだ。

・計測機器の差によるもの
エンジン出力を計測するパワーチェックマシンにはいくつか計測方式がある。メーカーはエンジン単体で計測してカタログ値としているが一般人はそんなことはできない。そのため、計測には「ダイノパック」と「シャシダイナモ」という2種類の計測機器を使うことになる。

この2種類の計測方式は、実測値に大きな差が出ることで知られているのだが、その原因はパワーロスをどのように扱っているかの違いである。

ダイノパック方式はハブに直接計測機器を取付けるため、正確に計測ができると言われている。確かに、走行ができる状態で計測するシャシダイナモは、タイヤのスリップ分僅かにパワーロスが出てしまう(タイヤは感覚として掴めないレベルで常に滑っている)。

さらに、エンジンの出力は駆動系の負荷(主としてギアの摩擦)によりパワーロスが出てくるのだが、このパワーロスの扱いこそが実測値に大きな差を生み出す原因となっている。

シャシダイナモ方式では、この駆動系で発生するパワーロスを補正する機能が付いているため、エンジン単体の出力を計測していると言える。そのため、カタログ値に近い数値が出てきやすい。

ダイノパック方式ではこの駆動系のロスを補正する機能がない。そのため、出てきた数値は駆動系のパワーロスを差し引いた馬力となる。これではシャシダイナモの計測値とは比較ができない。

そのまま、ダイノパック実測値として使用することもあるが、大抵の場合は、駆動系のパワーロスを係数によって算出してシャシダイナモ相当の馬力としているようだ。

だが、この係数の根拠が曖昧で、計測するショップによっては係数を盛ってくることもある。補正時の係数は1割~2割と言った具合で算出するので、1割違うだけで結果は大きく異なる。

単純にパワーを計測したい場合は以上の点を考慮した上で判断すればよいだろう。また、補正無しのダイノパック実測値は駆動輪出力、シャシダイナモ実測値はエンジン出力相当と捉えておけば、値が意味するものが何であるのか理解しやすい。

なお、チューニングによる効果を確認するためにパワーチェックをする場合は、同じショップで同じ機材をして計測してもらわないと、出てきた数値を単純に比較することはできないことがある。

・経年劣化やメンテナンスの差によるもの
エンジンはメンテナンスを怠るとパーツの摩耗が想定以上に進みエンジン出力が低下していく。酷い場合は圧縮抜けという症状が出てエンジンの出力は大きく低下する。

圧縮抜けについてはヘッドガスケット、ピストン、シリンダーの摩耗や破損といった原因があるが、これらは重大なダメージなので早急に対処しないと最悪エンジンブローに繋がる。

原因は様々だが、エンジンオイルが高温に晒される状態や経年劣化により潤滑効果が低下して発生するといったもの、煮詰まっていない燃調や高出力向けの燃調(ROMチューン)によるもの、サーキット走行やドリフトといったエンジンに高負荷をかけ続けるといった条件で発生しやすい。

また、Z33は、ラジエーターの電動ファンが故障する不具合を抱えている個体もあり、真夏の渋滞等でオーバーヒートを起こせば、ただでさえ熱いエンジンオイルが高温に晒されて潤滑効果を失い、ピストンがシリンダーを傷つけ圧縮が抜けることも考えられる。

上記のエンジン負荷の大きい行為は別として、通常の使用であればメンテナンスを定期的に行なっていればこれらの症状は出にくいだろう。

他にもエアクリーナーの目詰まりによる吸気損失、点火プラグの摩耗よる点火不良、インジェクターや燃料ポンプの劣化による燃料噴射量の減少など、経年劣化によるエンジン出力の低下は様々な要因で発生する。

・燃料のオクタン価によるもの
ガソリンはレギュラーガソリンとハイオクガソリンがあるが、その差はオクタン価で決まる。オクタン価の高い物がハイオクガソリンとなるが、日本では100近いオクタン価のもがハイオクガソリンとして販売されている。

しかし、オクタン価はメーカーやロットにより微妙に数値が異なるため、僅かにエンジン出力に差を付けてしまうことがある。ECUの制御次第なので確実ではないが、基本的にオクタン価が高い方がエンジンの出力は高く出る可能性がある。

また、ハイオクガソリン指定の車両にレギュラーガソリンを使用するとエンジンがノッキングを起こしてしまい、エンジン保護のためECUが点火時期を調整するが、その際エンジン出力は大きく下がることになる。

この、オクタン価とは自己着火性を示す指標であり、オクタン価が高いほど燃えにくいガソリンになる。

馬力のある車両がハイオクガソリン指定になっていることや、レギュラーガソリン指定の車両をROMチューニングでパワーアップする際はハイオクガソリン指定に変わることから、ハイオクガソリンは燃えやすいと勘違いされていることもあるが、実は全く逆である。

では、何故燃えにくいのにエンジン出力をあげる手法に使われるのかというと、エンジンが混合気を圧縮する際に発熱して自己発火するのを防ぐことができるからだ。

エンジンは圧縮率や過給圧を上げるとエンジンの出力が向上するが、同時に圧縮時の発熱量が増えてガソリンが自己発火(火種が無くとも発火する現象)してしまう。

この現象は、本来の点火時期よりも早く起きてしまうので早爆と呼ばれているが、早爆はエンジンの回転とは逆回転になる力を発生させてしまう。これでは、エンジンの出力が下がるだけではなくエンジンの内部パーツに多大な負担を与えてしまう。

早爆はノッキング(異常燃焼)の一種になるが、ノッキングはエンジン出力の低下だけでなく、エンジンブローといった深刻なダメージに繋がることもあるため、わざわざ燃えにくいハイオクガソリンを使って避けているというわけだ。

Z33はハイオクガソリン指定なので、レギュラーガソリンを使用するとECUがノッキングを回避するために点火時期を調整してエンジン出力が下がる。あえてレギュラーガソリンを使用するドライバーは居ないと思うが、Z33はハイオクガソリンでこそ本来の性能を発揮することを覚えておいて欲しい。

・スピードリミッターによるもの
国産メーカーの乗用車は約180km/hでスピードリミッターが動作するようになっているが、パワーチェックの際にこのスピードリミッターが計測の邪魔になる。

Z33は5速でパワーチェックをするのだが、エンジン回転数が約5000回転でスピードリミッターが動作してしまい、それ以上の計測はできない。リミッターを解除していない車両については、仕方なくその条件で最も高い馬力を実測値として表記することになるようだ。

ノーマルの車両でも正確な馬力をパワーチェックで計測してもらおうと思うのであれば、スピードリミッターを事前に解除しておく必要がある。

ROMチューンでECUを書き換えればスピードリミッターを解除できるが、ついでに燃調を含めたROMチューンにした方がコストパフォーマンス的に良いため、スピードリミッター解除だけで頼むのは微妙なところではある。

・自主規制
これは主にターボ車の話であるが、ターボ車は実は馬力を低めに表記していることがある。原因は自主規制だが、この自主規制は外車との競争原理を損なうと言う理由で乗用車においては撤廃された。

この自主規制が存在していた頃、乗用車の馬力は280馬力に、軽自動車は64馬力に制限するのが業界の決まりとなっていた。しかし、スポーツカーにおいてはスペック的に280馬力に収まる訳がない様な車両も、吸排気とEUCによるデチューンであえて性能を落として280馬力として販売していたのが事実だ。

RB26DETTを搭載したGT-Rや旧世代のアルトワークス等、スポーツモデルのターボ車は吸排気を交換するだけでも見違えるように馬力が上がる。

なお、この自主規制の始まりはフェアレディZとは少なからず因縁がある。自主規制の280馬力は当時最高の馬力を誇っていたZ32のカタログ値であり、この数値が規制値の根拠となってしまった。

以上がカタログ値と実測値は乖離する主な原因だが、これらが複合的に絡み合っているため、カタログ値と実測値は乖離しないほうがおかしいと言える。

■実測値で280馬力以上出すには?

Z33馬力をカタログ値以上出したい場合、どの程度チューニングで手を加える必要があるのか・・・。パワーチェックの調査でチューニング時のデータも揃ったので、簡単ではあるがまとめておく。

なお、前期型と中期型についてはカタログ馬力の差はあれ、実測値の開きは微々たるものなので、今回は前期型と中期型・後期型というエンジンの形式による分け方をしている。

・前期及び中期型
前期・中期型に搭載のVQ35DEはエアフィルターとマフラー交換、ECUの書き換えで280馬力が狙えるようだ。もう10馬力ほど欲しいならY字パイプ、キャタライザー、エキゾーストマニホールドも交換する。きっちりと馬力を出したいなら、この状態で現車セッティングをしておけば300馬力も狙えるかもしれない。
※以下数値はシャシダイナモ値

ECU書き換えのみ 270馬力
エアフィルター・マフラー交換・ECU書き換え 280馬力
エアフィルター・マフラー・Y字パイプ・キャタライザー・エキマニ交換とECU書き換え 290~300馬力

・後期型

後期搭載のVQ35HRではカタログ値が313馬力だが、吸排気の交換だけでも意外にもカタログ値に近い数値が出るようだ。吸気の大幅改良と高回転に性能を振ったためか、ノーマルでも良い数値になっている。もちろん計測時のリミッター解除は必須となる。

エアフィルター・マフラー交換(車両状態によってはECU書き換えも) 300馬力
エアフィルター・マフラー・Y字パイプ・キャタライザー・エキマニ交換とECU書き換え 310~320馬力

これらの数値はあくまでも参考値に過ぎないことは理解しておいて欲しい。現車合せによる調整や、上記のとおり計測環境や車両コンディションにより差が出てくるためだ。

また、馬力はあくまでも数ある指標の1つでしかない。同じ馬力でもROMチューンやアフターパーツの組み合わせによってフィーリングは全く異なるし、むやみに馬力のみを追求しても必要としているフィーリングが得られないこともある。それを忘れないで欲しい。