Z33中期VersionS

Z33に乗り始めてからおよそ半年が経過した。既に走行距離は5000kmを超えて1回オイル交換しているが、日々運転することで最初は持てあましていた感覚も、今ではある程度手懐けている感覚を覚えるまでに至った。

今のところ、走行性能だけで言えば効きが強いブレーキパッドへ交換と純正タイヤ以上のグリップ力を持つハイグリップタイヤに変えているだけで、後はノーマルの状態で乗り続けているのだがノーマルに近い性能だけにZ33の素性が掴みやすい。

今回は、そんな状態で半年間乗り続けて感じたことを書き連ねていく。

■大排気量3.5L

VQ35DE

Z33の心臓部とも言える3.5Lのエンジンは、国内基準で考えれば大排気量のエンジンといえる。

しかし、前期・中期型に搭載されているVQ35DEエンジンは高回転型というよりは汎用エンジンとしての性格が強く、高回転型でもなければ俊敏なレスポンスや吹け上がりは期待できない。

だが、高回転まで回したときのエンジンの音は綺麗な音で、エンジンが滑らかに回っているような感覚を覚える。アクセルペダルを踏み込むと、エンジンは振動ではなく咆哮をあげて加速していく様に「汎用エンジン」と表記するのに抵抗すら覚えてしまう。

かつて、高回転型の直列4気筒はがさつなエンジンだと車好きの上司が常々評価していたのを思い出したが、Z33に乗ってその意味を始めて理解できた。

高回転型の直列4気筒は、高回転まで回すとエンジンがはち切れんばかりの音を出してくる。持っている全ての力を出し切ろうとするエンジンの叫びは、「がさつ」と言われると確かにそうだが、レーシングエンジンのような寿命を削ってすら出そうとしているかのようなエンジンの叫びを肌で感じることができるので私は好きだ。

対して、VQ35DEエンジンは吹け上がりについては少し眠たい印象を受けるエンジンだが、トルク重視の設計のため低回転からマッシブなトルクを発する。

加速時に少しスロットルを開けてやるだけでシートに押しつけられる感覚を味わえるのは、3.5Lという大排気量がなせる技だ。おかげで、発進や加速は気を遣う必要が無いし、どのギアでも踏めば加速していくため、MT車の枠の中では巡航時に頻繁にギアチェンジを行う煩わしさを感じさせない。

この排気量が生み出すトルクは3000回転まではトルクの盛り上がりが楽しく、同時に扱いやすさを生み出しているのだが、3000回転から上についてはトルク感が控えめで物足りなさを常に感じる。

あくまでもスポーツカーの視点から見ての話にはなるが、3000回転以上の静かでスムーズに加速していく様子は、GTカーとしての性格が強く出ているZ33らしいといえばそうかもしれない。だが、せっかくエンジンを回しているのに雰囲気は台無しだ。

吹け上がりとトルクの物足りなさについては、吸排気の交換とROMの書き換えである程度満足感を得られるレベルに達することを事前に確認しているので、まずはそこを目指したい。

これ以上は予算の問題が出てくるが、満足のいく結果が得られない場合はスーパーチャージャーによるチューニングも視野に入れている。パワーアップチューニングの世界は1馬力1万円と言われているだけあって相応の覚悟が必要になるだろう。

■重たく曲がらないが安定感と安心感がある

RSW Z33メーターフードパネル

Z33に乗り始めてから決して消えることがない感覚のひとつに重量感がある。試乗でも、始めて所有するZ33に乗ったときでも、カスタムされたZ33に試乗したときでも、常に「重たい」感覚がつきまった。

特に重たいと感じるのが3.5Lのエンジンが格納されているフロント部分だ。このフロントヘビーな設計が回頭性を悪化させているのは間違いない。

Z33に慣れると、実用車のフロント軽さと回頭性に驚いてしまうことがある。スポーツカーですらないコンパクトカーですら回頭性の良さに驚き閉口してしまうことがあったぐらいだ。

また、Z33はステアリングが重いので、慣れると他車のステアリング操作に違和感を覚える。フロントが軽い車ばかりだったこともあり、吸い込まれるようにノーズが入る感覚は久しく気持ちよさを感じるものだったが、フロントセンターが出ていない感覚は直線で不安に繋がる。

曲がらない点に関しては、ある程度Z33に慣れたこともあり、コーナリングでは思い切ってフロントに荷重をかけタイヤのグリップ力で強引に曲げることで曲がるようにはなったが、タイヤとブレーキの消耗が激しく、いくらボディ剛性が高いZ33といえどもボディが歪まないか心配だ。

だが、重量は高い剛性が生み出した副産物でもあり、どっしりとした重量感と高い剛性は安心して身を任せられるメリットに繋がっている。久しく軽自動車に乗っていなかった身だが、久しぶりに運転してみると、これほどまで頼りないと感じる乗り物だったかとその差に驚いた。

想像はしたくはないが、事故の際は頑丈なZ33が搭乗者を守ってくれることになるだろう。この安心感は何よりも大きい。

■平均燃費は1桁に

納車当時は10.5km/Lという2桁燃費を出していたZ33だったが、実用的な使用が多くなるにつれて燃費は下がり、現在は9.8km/Lとなっている。

納車後暫くは、トルクの大きさに慣れないため、落ち着いた発進とギアをスムーズに繋げることに重きを置いていたこともあるだろうが、最近は実用的な使用もさることながら、停止からの加速の際にシートに押しつけられる感覚とエンジンの咆哮を楽しんでいることもあって燃費は悪化した。

だが、燃費は知っておくべきことだが気にはしてはいない。燃費が気になる人はハイブリッドカーや電気自動車を検討すべきだろう。燃費は2桁を切ったが、それでも3.5Lのエンジンがこの燃費で動くことが信じられないぐらいだ。

■何もかも高価

半年間で修理や交換となったパーツは無いが、もし修理するとなると売価が高い車ほど修理代は高額になる傾向がある。それは補修パーツだけでなくアフターパーツにも当てはまる。

Z33を購入する前に、納得のいくカスタムをした場合の試算をしたが、パーツ代だけで約200万円という計算結果が出てきた。

この金額ともなるとおいそれと出す訳にはいかないし、一気にパーツを買えるとその効果を実感しにくいので面白味に欠ける。とりあえず、スポーツ系のパーツとしては、一番不満を覚えている足回りを改善して、タイヤの消耗に合せてタイヤとセットで鍛造アルミホイールに交換する予定だ。

その後、マフラー交換とエアクリーナーの交換を当面の目標としている。これだけでもパーツ代だけで70万を超えてしまうのだが、新車販売時の価格が高い車種はアフターパーツも高額なので選定は慎重に行いたい。

今年は大きな出費が続くので、来年辺りから本格的にパーツを交換していく予定だが、それまでは電装装備の追加、内装や外装で気になるところに少しずつ手を入れていこうと思っている。

■大は小を兼ねる訳ではないが・・・

タワーバー

最近ウォッシャー液を補充する機会があったのだが、暫く補充してないこともあり2ヶ月ぶりの補充となった。手元に残っていた1.8Lのボトル1本半あれば十分かと思いきや、全て入れても満タンにならず、更に水を入れてようやく満タンになった。

後からバンパーを取り外した写真を見る機会があったが、ウォッシャータンクがあまりにも大いのが印象に残った。見た感じでは4~5Lは入りそうなサイズで、Z33は何もかも大きいと改めて感じた場面だった。

大きいと言えば車のサイズも大きい。デザインのせいで短く感じる全長は意外にもステーションワゴンと同等の長さがある。そのため、大通りを少しでも外れると長くて小回りの効かないZ33には厳しい現実が待っている。

結局、Z33を運転する際は道を選ぶことが多くなったし、幅も広く、隣接する車両が近くなる駐車場ではドアが開きにくいため、混み合っていない離れた箇所へZ33を止めるようになった。

これがショッピングのための駐車ならさらに困ることが出てくる。大きさの割に荷物が載らないのだ。

トランク部分は下部にスペアタイヤが設置してあるため、外観とは裏腹に底が高く収納スペースは低い。加えてリアタワーバーがトランクのど真ん中に鎮座しているため大型の荷物は入らない。加えて後部視界は絶望的だ。

実用的な部分に問題は多々あるが、そもそもZ33は実用車ではない。不満については、今まで実用的な車を所有したことがないため、車に人が合わせるということをやってきたが、Z33でも車の性格に人が合わせてしまえば問題は無い。

乗り始めの頃は、長さと相まって駐車場の出し入れや裏通りで対向車とすれ違う度に神経がすり減ることがあったが、今では慣れたし、実用的な車ではないことは百も承知で購入してきている。

Z33において「大は小を兼ねる」と言う言葉は当てはまらない。だが、大きさが安定性を生み出しているのは間違いない。私にとってはそのメリットの方が重要だ。

■ABSロックは出てこず

brembo

Z33にはいくつか問題があるが、クリティカルなレベルの問題と言えばABSロック問題しかないだろう。Z34にも引き継がれた、負の遺産ともいえるABSロック問題はZ33・34乗りが常に抱えている爆弾だ。

この問題の原因はすでに割れているので、問題となる組み合わせは避け、純正のタイヤと同じサイズにしている。そのおかげか、今のところABSロック問題は私の車両では発生していない。

今後、ホイール交換に合わせてタイヤのサイズも変更になる予定だが、タイヤの外径前後比率を極力純正タイヤ比に近い組み合わせをチョイスする予定だ。

■素性の良い電子スロットル

電子スロットルには何かとデメリットが強調されていることが多いように感じる。だが、横滑り防止(VDC)やタイヤの空転制御(TRC)といった電子制御には電子スロットルが欠かせない。

Z33は全てのグレードに電子制御が入っているため、ベースグレードでも電子スロットルになっている。電子スロットルはレスポンスが悪いとか、踏んだだけリニアにスロットル開かないといったネガティブな部分があるのは事実だが、Z33の電子スロットルは非常に素性がよい。

だが、勘違いして欲しくないのは、電子スロットルの素性が良いのであって、エンジンレスポンは前述したとおり良好とはいえない。

Z33の電子スロットル制御は、実際はリニアではないがワイヤー式のようなリニアな感覚に近い味付けに感じる。乗り始めから今まで、電子スロットルのネガティブな部分を感じないほど制御は完成しており、良い意味で電子スロットルらしさを感じない。

不出来な電子スロットルの車両に乗ると、丁寧にスロットルを開けているのにも係わらず、微妙な強弱を拾えずに突然吹け上がり、下手な発進や加速になる症状が出てくることがある。少々ラフなスロットル操作をした方がスムーズな加速や発進ができることすらあるのは腹立たしく思う。

Z33ではそのようなことはない。丁寧なスロットル操作は丁寧な反応を、下手なスロットル操作は下手な反応をする。すなわち、とても素性が良い電子スロットルが搭載されている。トルクが太いため、アクセル操作がラフな人が運転するとなると、同乗者の機嫌は急降下間違いなしだろう。

だが、電子スロットルにも1つ不満がある。制御が完全にリニアではない点だ。確かにリニアに近い制御だが、ある程度踏み込まないとエンジンがやる気を出してくれない。おおよそ1/3程度の踏み込みから調子が出てくる。

可能であればスロットルの制御は改善したいと感じている。幸いROMチューン時に電子スロットルの制御も変更が効くため、ROMチューンで解決できるだろう。

■FR車のZ33は滑りやすいのか?

リア

Z33は現在では希少なFR車だ。だが、FR車は滑りやすいイメージがつきまとう。

競技化されて久しいドリフトは、FR車の後輪が滑りやすい特性を生かした走行テクニックの1つだが、FR車を操縦する機会が少ないFF車世代にはFR車は滑るというイメージを現実のものよりも強く印象づけているように感じる。

私もFF車世代のため、Z33が初めて乗るスポーツ走行が可能なFR車となるのだが、Z33は簡単に後輪が滑るようなことはない。意図せずに滑ったのは、雨の日に交差点を曲がった後、横断歩道の白線に後輪が乗ったタイミングでアクセルを強めに踏みつけてしまった時ぐらいだろう。

FR車がFF車やAWD(4WD)車に対して後輪が滑りやすいのはまぎれもない事実だが、そもそもFR車が滑りやすいという印象が作られたのは、FR車が主流だった時代に作られたものだろう。

現在の技術で作り上げられたFR車と比べると、ボディ設計や技術レベルの面で劣り、タイヤの性能は低いため、曲がりにくく滑りやすい車両が多かったことは想像に難しくない。また、安価な車両もFR車が主流だったので、なおさら性能は低く、滑りやすいFR車が巷にあふれていたことも、その印象を更に強くしているのではないだろうか。

現在のFR車はボディ設計もタイヤの性能も劇的に向上しているため、過去の滑りやすいFR車というイメージは運転しても感じられない。もちろん、限界は高いがそれでも限界はあるので、限界を超えたりグリップ力の低いタイヤを使えば滑ってしまう。

しかし、Z33には電子制御が搭載されているのでタイヤが滑り始めると即座に感知して介入してくる。お陰で大きく破綻する前に車両は姿勢を取り戻すことができる。

私のZ33はVersionSなのでタイヤの空転だけでなく、横滑りをも制御するVDCが搭載されている。この電子制御はおまけ程度のもではなくFR車特有の後輪の滑りやすさを補ってくれる。

だが、電子制御が介入して破綻を押さえるまで1秒程度かかることもあったので過信をしてはいけない。その間に破綻を抑えきれなければ回復できない。とはいえ、早い時は100ミリ秒を切るのではないかというレベルで破綻を押さえ込んでくることもあり、いざという時は頼りになることは確かだ。

■世間的には高級車?

NISSAN

Z33はスポーツカーのベース車両として買ったので高級車という感覚で所有しているわけではない。だが、世間の目はそうではないようだ。これは私にとっては若干問題となっている。

私は、車が好きだから車にお金をつぎ込んでいるだけであって、人並み以上のお金を持っているわけでも稼ぎがよいわけでもない。

そもそも、若い人が外車や高価な車を中古で買って乗ろうという心理は、車が好きか派手好きかのどちらか、その両方だろう。そうでもなければ、身の丈に合わない車には乗らないし、なにより高給取りなら新車を買っていただろう。

しかし、現実はそうはいかない。程度がよい車両を選んだのもあるのかもしれないが、同じ価格帯の車両でも、ワゴンなどの実用車は高級感を感じさせないので、クーペという非実用的なデザインがそう思わせるのかも知れない。

これが想定した以上にそのように思われていると感じることが多くて困っている。ご近所さんや仕事でおつきあいする人、会社の上司など購入後に言われ、その反応に少し驚いた。11年落ちの車両だが世間の目はそうは見ていないようだ。

スポーツカーらしくすれば、そのイメージを払拭できるのかもしれないが、それはそれで目立つので他の問題も出てきそうだ。

■10年は乗り続けたい

メーター

半年間Z33に乗り続けて感じたのは、改めて良い車ということだ。面白い車は、シートに座りステアリングを握った瞬間にワクワクするような感覚になるが、Z33もこのワクワク感がある。

まだ、スポーツ系のパーツを取付けていないため、走る楽しさは今ひとつ物足りないところがあるが、ずっと乗り続けたいと思わせる何かがZ33にはあるのは確かだ。今では、10年は乗り続けたいと思わせてくれる。これもZの伝統が作り上げた魅力なのかもしれない。

デザインも伝統的な意匠を踏襲しており、フロントからリアにかけて膨らんでいく伝統のデザインはどこか妖艶な雰囲気すら感じる。外見で最も魅力的な箇所と言えばそこしかないだろう。視界に入る度に良い物だと惚れ惚れしているが、どうやら、手懐けたと思っていたら私がZ33に魅せられているだけなのかもしれない。