今のところR1 TITANによりリアピースとセンターパイプまでは交換しているが、これからエンジン側に向かってさらなる排気系統の交換をするとなると近接排気騒音の問題が出てくる。
そこで、あらかじめ静かにしておけば良いとサイレンサー付きのフロントパイプを取付けてみることにしたのだが・・・。
■排気効率と騒音と音質
Z33用の社外品フロントパイプは数多くあるのだが、サイレンサー付きのフロントパイプとなると少ない。排気効率の向上という視点で見ればサイレンサーは抵抗以外の何物でも無いからだ。
とはいえ、Z33の排気系統はエキマニ以降全て社外品に交換をすると車検に通らないレベルまで近接排気騒音が上がることも珍しくない。車検に通らないのは個人的に論外だが、必要以上に近接排気騒音が上がってしまうのは避けたいところ。
そこで、今回、サイレンサー付きのフロントパイプで音量を抑え込んでしまおうと考えたのだ。
Z33に利用できるサイレンサー付きフロントパイプはいくつかあるのだが、比較的安価で入手性が良いものならフジムラオートのZ34用サイレントフロントパイプかHKSのZ33・Z34両対応のサイレンサー付きフロントパイプになるだろう。
フジムラオートのZ34用サイレントフロントパイプはZ34用として販売しているものの、実はZ33に無加工で取付けが可能だ。
排気効率を考えてか、それともZ34用として設計しているからだろうか。管の径はエンジン側が60パイ×2でリアが70パイ(VQ35DEのノーマルは50パイ×2から60パイ?HR用はリア側がもう少し大きいらしい)とZ33の純正よりも大きい。
消音効果も大きく、メーカーの自己計測では-10dbの効果があるとうたっている。-10dbがどの程度の効果というと、実に1/3まで音が小さくなるほどの絶大な効果になる。そのためサイレンサー部分の太鼓は大きい。
気になる点としては、蛇腹部分が無いため、熱による膨張等で発生した排気管の伸びを調整する遊びが無くなる。擦ったりした際もそうだが、排気系統の弱い部分に応力が集中してクラックが入る可能性が上がるかもしれない。
HKSのZ33・Z34両対応のサイレンサー付きフロントパイプはVQ35DE搭載モデルのZ33フロントパイプと同じ径のようだ。
フジムラオートのZ34用サイレントフロントパイプが同社の競技用マフラーでも車検に通るレベルに落とせるという絶大な消音効果をコンセプトとしているのに対して、HKSのサイレンサー付きフロントパイプは音質を重視しつつも、車検にも通るレベルまで控えめに消音するというコンセプトとなっている。
消音効果についてはメーカーが公表していないものの、同社の排気系統の組合せ資料から計算して-3~4db程度の消音効果があると推察できる。-3dbというと70%程度まで音が小さくなる訳だが、耳では差がわかりにくいこともあるようだ。
音質に関しては管の径をVQ35DE搭載モデルの純正と同等の径(50パイ×2から60パイ)にすることで、同社のエキマニ・キャタライザーと組合せても、バリバリと割れるような音が出ることを抑えることができるとのことだが、管径とサイレンサーが有ることを考えると純正のセンターパイプよりも抵抗が高い可能性は否めない。
だが、エキマニやキャタライザーを変えても綺麗な高音を楽しみたい。でも、車検には通るレベルで・・・。という、わがままに応えてくれる可能性がある。
また、フジムラオートのZ34用サイレントフロントパイプでは無かった蛇腹部分が有るため、応力によるクラックの問題はそこまで神経質になる必要は無いだろう。加えて、純正よりもセンターパイプが15mm上に保持されるため、車高を落としてフロアを擦りそうな車両にもメリットがある。
■フジムラオート Z34用サイレントフロントパイプをチョイス
今回は、大きな消音効果を求めてフジムラオートのZ34用サイレントフロントパイプをチョイスしてみることにした。
最初はフジムラオートのショッピングページから直接購入しようとしたのだが、個人情報を記入するページでセキュア(SSL暗号化通信)を確保していないという危なげな仕様だったため、やむなくネットのカー用品量販店経由で購入した。
商品構成はZ34用サイレントフロントパイプ本体とボルトナット2セット、リア側ガスケット1枚という内容だ。
フロント側の60パイ用ガスケットは付属しておらず、別途用意するか、既に取付けてあるガスケットを再利用することになる。
純正は90度に近い急な曲げだったが、HRエンジンにビッグマイナーチェンジした際のフロントパイプのように緩やかな曲げになっている。曲げが強いと流速が落ちるため、可能な限り排気効率を落とさないように設計しているのがうかがえる。
クラックが入りやすい溶接部分は肉厚で、いかにも強度を確保していますという溶接具合だ。
溶接も綺麗でステンレスの輝きと共に惚れ惚れしてしまう。見えないところ取付けられてしまうため、勿体ないと思うのは筆者だけだろうか。
溶接も綺麗でステンレスの輝きと共に惚れ惚れしてしまう。見えないところ取付けられてしまうため、勿体ないと思うのは筆者だけだろうか。
サイレンサーはストレート構造のパンチングメッシュパイプになっており、恐らく内部にはグラスウールが充填されていると思われる。
消音のためとはいえ、サイレンサー部分が排気の抵抗となるのは避けられないだろう。だが、サイレンサーの大きさはその消音効果を裏付けるかのような大きさだ。
消音のためとはいえ、サイレンサー部分が排気の抵抗となるのは避けられないだろう。だが、サイレンサーの大きさはその消音効果を裏付けるかのような大きさだ。
なお、今回は、DIYで取付けをするには比較的楽な部分には入るのだが、新しくお付き合いをすることとなった整備工場へお願いすることにした。
(この場を借り、筆者の我が儘につきあって頂いたことを改めて感謝致します。)
フロント側の60パイ用ガスケットを別途用意して持ち込んだのだが、問題なかったとのことなので純正のガスケットをそのまま再利用し、作業は難なく完了したようだ。
■消音効果
引き渡されてエンジンを回してみたところ、エンジン始動時からすでに音が違う。初爆時のすぐ後にいつもより静かだと感じることができた。人の耳で判断できるレベルで音が違うというのは、数値にすると思った以上に効果が出ていることが多い。
そして、それを裏付けるかのように、全域にわたって消音効果を発揮していることが確認できた。空吹かしをしてみてもスポーツマフラーを付けていると思えないほど静かで、純正のマフラーに戻したかのような感覚に陥るほどだ。
実走だと、さらに消音効果は誰でも確実だと認識できるレベルになり、特に高音のファーンという連続した高音は見事に消えて無くなった。いつもなら、アクセルを踏み込み加速すると2000回転から良い具合に響き始めるのだが、残ったのは低音域のみだ。
その低音域は、元々、巡航時の上り坂や街乗り時にアクセルを踏んで加速する際に強く出ていたものだが、高音ほどでは無いにしろ半分~2/3程度には静かになっている。
確かに、-10dbという実績も嘘ではないだろうと思うほど消音効果は強烈だが、余りにも消音効果が強すぎて美味しいところが丸ごと消え去ってしまった。これは、-10dbという数値を軽視してしまった筆者のミスが招いた結果だ。
そして、もう1つ筆者に問題があったことが分かった。フジムラオートのZ34用サイレントフロントパイプを取付けた後、明らかに低速トルクが太くなり高回転時の抜けが若干悪化した。これが意味する所は1つ、R1 TITANの抜けが良すぎて低速トルクが細くなっていたということだ。
フジムラオートのZ34用サイレントフロントパイプを取付けることにより、排気の抵抗が増えて痩せた低速トルクが戻ってきたと考えないと辻褄が合わないのだ。
R1 TITANに取付けた後、興奮の裏で変化していた低速トルクに気づけなかった訳で、レビューの記事で低速トルクが細くなった感覚は無かったなどと書いていたのがなんとも間抜けだ。
ともあれ、低速トルクが戻ったおかげで街乗りが快適になったものの、踏み込んだ際のテンションは全くあがらない仕様になってしまったので、HKSのサイレンサー付きフロントパイプを導入するべく既に動いている。
ずいぶんと先にはなるが、エキマニやキャタライザーの交換をした際に車検に通らない、又は耐えられない音量なら再びフジムラオート Z34用サイレントフロントパイプの出番があるかもしれない。それまでは大切に保管しておこうと思う。
■最後に
フジムラオートのZ34用サイレントフロントパイプは静かすぎて、やり過ぎたと思えるほどスポーツマフラーの排気音を消し去ってくれた。
100db弱程度の競技用マフラーを付けたいが違法改造状態は嫌というオーナーや、スポーツマフラーの外観は好みだが音は純正並で良いというオーナーには願ってもないパーツだろう。
※Z33での話。2010年4月1日以降の新規登録車両から騒音の規制が厳しくなり、事前認証済みの車検対応マフラー以外は各種騒音が適正値でも車検に通せない。
想像以上の消音効果に耐えることができなかったため、消音効果が控えめなHKSのサイレンサー付きフロントパイプを注文する結果になったのだが、ともかく静かにしたいならフジムラオートのZ34用サイレントフロントパイプで間違いないだろう。