中華Androidカーナビ装着

10.1インチとZ33には不釣り合いなサイズにも感じるPumpkin VA0301Sを搭載してから2ヶ月。故障も目立ったトラブルも無く、安定した状態で運用ができている。

だが、不満がないというわけでもない。実際に車両に搭載して運用することで初めて見えてきた部分もあるため、今回は実際に運用をしてみて理解できたメリットとデメリットを紹介していく。

■車両環境に耐えられるか

Pumpkin VA0301Sを搭載したのは8月中旬だ。炎天下に駐車していることが多いため、車内は当然過酷な環境に晒されることになる。私のZ33には、ドライブレコーダーの過熱対策として車内の強制換気システムを構築しているが、それでも炎天下に駐車した際は直射日光が当たらない箇所で45度を超える温度を記録する。

直射日光が当たるレーダー探知機は液晶が黒ずんで見えなくなるほど暑い環境なのだが、当然Pumpkin VA0301Sも熱により影響が出るかと思いきや、特に問題無く動作する。

特に気になっていたのがタッチパネルの誤動作だが、真夏の炎天下、それも14時という最も暑い時間帯でもタッチパネルは起動時から正常に動作していた。ただ、直射日光が当たる位置にタッチパネルがあるのであれば話は違うのかもしれない。

真夏もそうだが実は真冬の環境も過酷だ。冬季はエアコンの暖房による発熱が影響することもあるとのことだ。設置場所がエアコンのダクトが近いため、暖房の熱がダクト表面を伝わってダッシュボード内部を暖めてしまう。
※机上テストでは室温27度時に筐体表面温度40度

電子機器には熱から電子回路を保護するためにサーマルスロットリング機能が搭載されているものがあるが、この機能が発動すると性能が低下するため、パフォーマンスに大きな影響を与えてしまう。また、サーマルスロットリング機能でも対応できない場合は動作が不安定になるか強制シャットダウンに入るため問題だ。これについては、冬季の運用を実際にしてみるしかない。

過酷な環境と言えば車の振動もそうだろう。通常の走行でも道が悪いと瞬間的に1G以上の衝撃を車体は受ける。当然モニターの固定が甘いと衝撃でチルト機能が勝手に動いてしまうことになるが、これも問題は無かった。

だが、モニター自体の固定は遊びが大きすぎてガタつくのは気になるかもしれない。手で動かすと左右回転方向にガクガクと動くが、走行中に揺れていると感じるほどでもなく、個人的には問題は無い範囲なのだが、サーキット向けのハードな足回りを組んでいる車両なら振動で目立つほど揺れるかもしれない。

■操作性

操作はタッチボタン

Pumpkin VA0301Sには一般的な操作をするための物理ボタンはない。操作はタッチボタンが担うのだが、タッチボタンの位置は左ハンドルを基準とした設計のため画面左側に集中している。

右ハンドル車での操作では画面の左端まで大きく腕を伸す必要があるように見えるが、ダッシュボードの上に近い位置にモニターがあるならいざ知らず、Z33では位置が手元に近いため操作性は良好だ。モニターの縁に指をかけながら親指で操作すると、直感性は得にくいものの確実に反応してくれる。

だが、画面内部の操作については、中央に近い位置になるほど縁に指をかけたまま操作しにくいため、タッチ位置がずれることが多い。だが、ここでタッチパネルの10.1インチ1024×600という低解像度が活きてくる。

大画面低解像度

低解像度の環境では高解像度と比較して全ての表示が大きくなるため、アイコンやボタンが大きく表示されるため押し間違えにくいというメリットがある。高画質という視点ではデメリットでしかない低解像度のパネルもタッチの操作性では逆にメリットになるという意外性を発揮してくれた。

逆に、低解像度故かAndroidのピクチャーインピクチャー機能は微妙なサイズで使い所が無いと感じるのだが、ピクチャーインピクチャー機能は分割画面があれば不必要だと感じる。

アプリが画面分割に対応している必要があるが、ナビ+音楽再生という使い方でも10.1インチなら実用サイズに達しているため、操作性や表示情報量は十分といったところだ。

次に文字入力だが、デフォルトで日本語表示にはなっているのだが、日本語キーボードがインストールされていていないため、初期状態では日本語入力ができない。そこでGoogle PlayからGboardをインストールして日本語入力ができるようにしている。

文字入力は高負荷時だとラグが酷いと言う程度で、通常の利用では特に問題は無い。だが、走行中に文字入力など行えるわけでもなく、音声入力を試してみたところ、停車中は認識精度が良好だったが、走行中はロードのイズが酷いのか音声認識はほとんど認識できなかった。

また、Googleアプリをバックグラウンドで起動しておけば、OK Googleで音声入力による操作や目的地の検索といった使い方もできる。もちろん、インターネットに接続していることが前提だが、これは便利かもしれない。
※音声入力やハンズフリー通話はモニターに内蔵されているマイクでも利用可能

■機能性

中華Androidカーナビに求める物は人それぞれだろうが、最低限機能しないといけないのは音楽・動画・カーナビ機能だろう。個人的には音楽9:動画0.5:カーナビ0.5程度の利用頻度割合なので、音楽の再生については重要な部分だ。

まず、音質なのだが、これは合格だ。及第点でもなく十分な音質を確保している。carrozzeria DEH-7100に音声を外部入力してスピーカーを鳴らしているためアンプ部分は評価できないが、外部出力の音は机上テストの時点でイヤフォンや外部スピーカーと接続して良好なことを確認している。

だが、音楽の再生については問題もあった。というのも、内蔵ストレージに保存したmp3ファイルが音楽アプリで全く表示されなかったからだ。Google Play Music・ASUSの音楽アプリ・Meridianすべてで同じ症状が出ていたのだが、純正の音楽アプリだけはファイルを認識していた。

Meridian

純正の音楽アプリはファイルを選択する際の操作性や視認性が劣悪のため、利用したくはなかったので何とか対応策はないかと操作していたところ、Meridianの上部左上からツール箱を選び、画面が切り買ったら「SDカードをスキャン」をタッチすると、今まで表示しなかった音楽アプリで内蔵ストレージに保存したmp3が表示されるようになった。

その後は何もせずに自動的にライブラリに登録されるようになったが、何が問題だったのだろうか・・・。少し特殊なカスタムがしてあるAndroidだからだろうか。今でも、たまにこの操作をしないと登録されないファイルがあるため、Meridianは再生には使わないがインストールしたままだ。

音量調整

音楽を再生しながらナビの利用もしてみたが、音楽をバックグラウンドで再生しながらナビの音声が鳴るときはナビの音声が優先になる。これ自体はAndroid自体の機能だが、ナビ音声の音量はオーディオとは別に調整が可能になっている。これはGoogle Mapは当然、後からインストールしたYahoo!カーナビもナビ音声の音量で調整が可能だった。

ただ、ナビ音声は音が割れかけた音質になっているのが若干気にはなる。どうやら、Pumpkin VA0301S内部で音割れしているようで、ミックスの設定が悪いのかもしれない。

ナビの精度についてはGPSセンサーのみでの航法のため、国内メーカーのカーナビのように自律航法ができない。そのため、長いトンネルや高層ビルに囲まれた道路、急な谷間といった環境では精度が出ずにナビが混乱する可能性は否定できない。

このような遮蔽物がほとんど無い地方での実走では、ナビ(Googleナビ・Yahoo!カーナビ)の実用性は問題がほとんど無いと言って良いだろう。ただし、オンライン前提のカーナビではインターネットの接続環境を用意する必要があるうえ、地方の僻地といった電波の届かない地域での運用も場合によっては視野に入れておく必要がある。

とはいえ、主要道路が敷設してある道路であれば3大キャリアの電波環境は良好といえるので、まれにカーナビを利用する程度ならスマホのテザリングで十分だろう。実際に、iPhone 8でテザリングしてGoogleナビ・Yahoo!カーナビを利用したが、トラブルも無く目的地へと導いてくれた。

ただし、インターネットに接続する頻度が少ない環境でオンラインにナビを使うとストレスに感じることがある。オンラインナビを使おうとインターネットに接続するとアプリの更新が勝手に始まり、ナビの操作に支障を与えてしまうからだ。こうなると動作が重くなり、目的地検索のため入力した文字の表示が数秒遅れるレベルにまでなってしまう。

アプリの更新が重ならなければ問題にはならないので、ある程度の頻度でインターネットに接続してアプリを更新しておくか、Google Playの設定で自動更新をしない設定に切り替えることで対応は可能だ。

Bluetooth機能

中華Androidカーナビでは、まともに利用ができないモデルも散見されるBluetooth機能だが、Pumpkin VA0301Sについてはマイクの性能に問題が生じた。

ハンズフリー通話もスマホの音楽再生も利用ができるのだが、停止中は問題ないものの、走行し始めると通話中にこちらの声が聞こえなくなるほどロードノイズを拾ってしまい通話相手から声が聞こえないと言われた。

同じ環境でも、carrozzeria DEH-7100のハンズフリー機能は正常に通話ができることと、外付けマイクを取付けているにも関わらず、内蔵マイクと外付けマイクのどちらから声を拾っているのか分からない反応を通話相手が示していただけに、マイクの性能に問題があるのは確かだ。

スマホの音楽再生

一方で、スマホの音楽再生については十分な音質を確保しつつ安定して再生していたので、Bluetoothハードウェアそのものの問題では無いことも付け加えておきたい。

Bluetooth機能については問題出てくる可能性を考慮してcarrozzeria DEH-7100に任せようと考えていたが、Pumpkin VA0301SのBluetoothソフトウェアが良くできているため、Pumpkin VA0301Sで引き続き利用ができないか模索中だ。

チルト機能の縦画面

ここまで来て大きな不満がないPumpkin VA0301Sだが、どうしても擁護できないレベルの機能もある。チルト機能の縦画面だ。このチルト機能は横画面に使うには不満はない。だが、画面回転機能による縦画面状態が全く意味を成していない。自動で画面が回転することもなければ表示の切り替え設定も無く、画面の回転制御アプリでも頑なに横画面の表示を続ける。

強制的に縦画面になるアプリであれば縦表示になるかもしれないが、一般的なアプリでは縦横表示両対応なのが普通だ。テスラ モデルSのように縦に長い画面表示で運用できるのかと思ったのだが、どうやら期待し過ぎだったようだ。

イルミネーション

もう1つ気になるところとしてイルミネーションの連動機能がある。縦画面ほど大きな不満ではないが、イルミネーション連動による光度調整は1段ごとの調整量が大きすぎてベストな状態になってくれない。夕暮れだと暗く、夜だと明る過ぎるという状態になってしまうのだ。

結局、利用するアプリの表示テーマを暗色系に切り替えることができたので、アプリ側で対処できたが、利用するアプリが明色系のテーマしか持っていないのであれば、この問題に悩まされることもあるだろう。

MX動画プレイヤー

最後に動画についてだが、初期のアプリが定番中の定番であるMX動画プレイヤーのため不満が出ることがない。Pumpkin VA0301S の性能は今の性能からみれば酷いものの、1080pのtsファイルが再生可能なので、4K・2Kといった高画質を求めなければ実用性は十分だ。

モニターが10.1インチといえど1024×600という低解像度ということからも、4K・2Kといった高画質を無理に用意する必要性もない。

他に動画、というかMX動画プレーヤーでの動画再生で気になる所があるといえば、光度の調整機能が利用できないのと、音声のボリュームがAndroidの音声ボリュームとして反応するため両方が機能していないことぐらいだろうか。
※同じような機能はどのアプリでも無効になる

Pumpkin VA0301S含め、多くの中華AndroidカーナビはAndroidのシステムボードだけでなく外部入力などを含めて独自のミキサーで制御しているため、こういったことが起こるのだが、他のアプリと同じくボリュームのタッチボタンで制御すれば良いだけのことだ。

しかし、10.1インチという画面はやり過ぎたかもしれないと感じることもある。画面が大きいため走行中に目視した際に情報を一気に読み取れない場合があるため、メリットなのかでメリットなのか図りきれないところがあるというのが正直なところだ。

■拡張正

中華Androidカーナビの最大のメリットは拡張性に有るといっていいだろう。これはAndroid OSの性能だけに頼った物ではなく、カーナビとして利用ができるように構築されたシステムがAndroid OSと混ざり合って発揮されていると言える。

例えばカーナビでは珍しくないUSBフラッシュメモリの利用だが、当然Pumpkin VA0301Sでも利用ができる。

内蔵のストレージは16GBでユーザーが使える領域はその内12GB程度しかないため、足りないと思うなら、USB端子にUSBフラッシュメモリを差し込んでストレージを拡張できる。Pumpkin VA0301SにはUSB端子が2つあるので2個同時接続も可能だ。

HUBでUSBフラッシュメモリ2本

ファイルマネージャーによっては、後から差し込んだUSBメモリしか表示しないものもあるが、デフォルトのファイルマネージャーは両方ともに表示してくれる。利用するアプリが中身のファイルを全て認識できるかは別として、最大128GBまで認識するとのことなので、容量に困ることはそうそう無いだろう。

それでも足りないならUSB HUBを取付けてUSBフラッシュメモリをさらに増やすと言う手も有る。また、USBフラッシュメモリだけでなく、衝撃に強いポータブルSSDの認識も確認しているので、手持ちのハードウェア資産を有効に活用できるのは嬉しいところだ。
※ポータブルHDDも認識するが衝撃と熱(暑さも良くはないが、寒いと軸受油の粘度が増加してスピンアップに失敗することでアクセスできなくなる)に弱いので車載にはお勧めしない

しかも、このUSB端子にポータブルDVDドライブを接続してみたところ、セルフパワーで電源を供給するとディスクの中身を認識してしまうほど柔軟性が高い。

VLC for AndroidとMX動画プレーヤーでDVD-Videoを再生できるか試してみたのだが、コピーガードが無いDVD-VideoならMX動画プレーヤーで視聴ができた。字幕は表示できなかったが、音声チャンネルは選択可能で、再生にはほとんど支障がないレベルと言っても良い。
※レンタルや市販のDVD-Videoはコピーガードが有るためこの方法では視聴できない

だが、そこまでして再生する必要があるかというと微妙なところで、PCが有るならISOファイルにするかmp4にでもエンコードして利用したほうが使い勝手良いだろう。

このように、さすがはAndroidだなと感心するところもあるが、拡張性に限界を感じた部分もある。Pumpkin VA0301SではTasker系のアプリ(Xposed edge Proも)でハードの状態をトリガーにしても反応しないため、機能が大きく制限される。
※rootを取得すれば変わる可能性がある

Tasker系のアプリは一部機能制限

「このアプリを起動したら」といったアプリに関連したトリガーは利用できるが、「モニターが表示されたら」といったハード関連の動作をトリガーにすることができない。これが可能になれば、コールドブートから指定した音楽アプリを起動してレジューム再生という一連の制御が可能になるはずだが、何とかならないものだろうか。

※後から分かったことだが、キーをOFFにしてシャットダウンするまでの間、実際にはスリープ状態になるのではなく、モニターのバックライトを消しているだけでOSは動き続けている。バックライトが消えていてもモニターには映像信号が伝えられており、OS的にはモニターは消えていないということになるためトリガーとしては使えない。通りでスリープ時の暗電流が大きいわけだ。

PASSコード

拡張性の不満といえば、Androidシステムボード以外のハードウェアを設定するときも感じた。この設定は、端末情報にあるギアマークからPASSコード(8888)を入力して設定するのだが、設定内容を反映するためセーブするとホームの壁紙、アイコン、ウィジェットの表示が初期化されてしまう。アプリは消えないのだが毎回設定し直すのが面倒だ。

詳細設定

ただ、Androidシステムボード以外のハードウェアを設定自体は重箱の隅をつつくような調整が可能になっており、普通ならユーザーに触らせないように隠している部分もユーザー側で調整できるのは嬉しい。

起動時のロゴ

ちなみに、この機能の一部には起動ロゴを変更することができる箇所があるのだが、自動車メーカー・ブランドのロゴが用意してある。当然許可などは取っていないだろうが、メーカー純正風の起動画面にできるのでNissanロゴに設定して利用している。

追加の拡張としてBluetooth接続のODBII スキャンツールで車両ステータスをリアルタイム表示しようと思っていたのだが、ODBII連動機能のレーダー探知機と信号を取り合うため、同時使用ができないことが分かった。いつかは試して見ようとは思っているのだが、これはしばらく保留だ。
※中華AndroidカーナビのBluetoothはスレーブ(子機側)だが、Bluetooth 接続タイプのODBII スキャンツールは接続が可能と表記有

もう1つ拡張予定としてバックカメラの取り付けも予定している。バックモニターがないことには、小さいながらも常々不満を感じていることもあり、Pumpkin VA0301Sをバックモニターとして利用することを導入目的の1つとしていたのだが、こちらは近いうちに取付けてみようと用意を進めている。

■まとめ

前車の頃からAndroidタブレットPCを車載専用として運用していたため、その利便性は理解していたつもりだったのだが、中華Androidカーナビはハードウェアレベルで車載に最適化されているため、AndroidタブレットPCを車載専用として運用していた際の利便性が向上すると同時に不満も解消された。

もちろん、コールドブートからのレジューム再生など小さな問題は残っているが、大きな不満はなく、有るとすれば不満ではなく不安だろう。やはり中華物だけに故障しないか不安は残ってしまう。

こればかりは、実際の運用を続けて確認していくしか無いが、ハードウェアの性能に耐えられなくなるまで、当面Pumpkin VA0301Sを使い続けていく予定だ。もし、何か問題があれば記事にて報告したいと考えている。

しかし、気をつけているつもりだが、毎回作業の度にインパネの塗装が剥がれていくのには気持ちが落ち込んでしまう。前からの分も合わせて塗装剥がれが目立ち始めたため、Pumpkin VA0301Sの取付けに続いてカーボンシートで徹底的にラッピングし始めているところだ。