中華Androidカーナビ

前回の記事で中華Androidカーナビを導入することは決めていたのだが、最終的にPumpkin VA0301Sを(英語ページ)導入することに決めた。理由はいくつかあるが、長らく7インチの画面を見続けていた私にとって10.1インチの大画面は大きな魅力だった。また、1DINサイズであることも外せない要素だ。

この2つの要素を満たすモデルはそれほど多くなく、XTRONSの競合モデルと迷った末、画面のチルト機能が良好なPumpkin VA0301Sに決定した。

手元にある10.1インチのタブレットPC並みの画面サイズと言うことで、大きさは大凡理解していたつもりだが、箱から出したときに改めてそのサイズの大きさに驚いた。すぐにでも取付けてみたい気持ちが沸いてきたが、グッと抑えて中華Androidカーナビとはいかなるものなのか、机上テストと事前設定を進めることにした。

■Pumpkin VA0301S開封

Pumpkin VA0301S開封

箱を開けると緩衝材に包まれた本体が見えるが、やはり10.1インチの迫力は大きく、この時点でも大きなインパクトを与えてくる。

中身の一覧は以下のとおりだ。

Pumpkin VA0301S本体
ISO規格ハーネス
VIDEO-OUT1/2・CAMERA IN・USBコネクタケーブル
外部マイク・音声主力(FR/FL/RR/RL/SW)ケーブル
外部映像入力(RCA3端子)・USBコネクタケーブル
マイク(3.5mmモノラル)
GPSセンサー
Wi-Fiアンテナ
1DIN用ブラケット
1DIN用ブラケット用エジェクトピン 2個
2DIN用ブラケット
ブラケット固定用ネジ
英語・ドイツ語マニュアル
サポート連絡先

1DIN規格

10.1インチの画面と比較すると尚更小さく感じてしまう筐体だが1DIN規格(若干大きい)ではある。しかも筐体は一般的なヘッドユニットと比較すると奥行きが短い。

中身がAndroidのため、スマホの中身が入っていると考えれば空間的にはこのサイズでも余裕というのも納得がいく。だが、この短さには理由がある。背面のケーブル類が多いからだ。

ケーブル類が多い

カーナビとしての機能をてんこ盛りしているためケーブル類が多く、背面にWi-Fiアンテナを取付けることになるため、筐体を切り詰めて収納できる空間を確保している。だが、車両側の空間によってはケーブル類が納まりきらないかもしれない。それほどケーブル類が多い。

だが、全てのケーブルを取付ける必要があるかというとそうでもない。コネクターで脱着ができるため、不要なケーブルは取り外しておくことができる。

画面は10.1インチのサイズ

画面は10.1インチのサイズだけに、こちらが本体かと思うほどだ。左側にタッチボタンが集中しているが、これは左ハンドル車両が基本の国をターゲットにしているためで、日本車のように右ハンドル車だと操作時の視点と指の移動は多めになってしまう。

タッチボタン

このタッチボタンの近くには内蔵マイクとリセットボタンが用意されている。Pumpkin VA0301Sはスリープボタン長押しでシャットダウンができないため、システムがハングアップした場合などはリセットボタンを使うのが基本的な解決方法のようだが、一般的な中華Androidカーナビも似たような操作になるようだ。

タッチモニターは脱着式

タッチモニターは脱着式で、背面のパドルを外側に開いて上に引っ張るとレールから抜き出すことができる。ケーブルもコネクターで脱着できるため、画面部分を完全に筐体と切り離すことが可能だ。

だが、モニターの台座は筐体から取り外すことはできない。そのため、1DINのスペースに収めようとすると台座が飛び出ることになるので、事前に取付ける余裕が車両側にあるか確認しておくべきだろう。

■配線加工

ISO規格コネクター

中華Androidカーナビのほとんどは配線剥き出しか欧州車向けのISO規格コネクターが装備されている。国産車はISO規格のコネクターではないため、接続する際には車両と接続するハーネスに合わせて配線にギボシ端子を取付ける加工が必要だ。

本体に配線図

この作業には配線図が必ず必要になるのだが、Pumpkinの商品紹介にはこの重要な配線図が公表されていない。配線図があるか少し不安ではあったのだが、このように本体に配線図が大きく表示されているため、DIYで電装品を取付ける知識があればこの図を見れば配線は難しくはないだろう。

だが、実際に配線を加工していくと中華のお粗末さが出てきた。配線図は20本の表示なのだが、コネクターから出ている配線は18本しかない。しかも、配線図には無い色のコードが混ざっているなど「大丈夫なのか?」と感じられずにはいられない。

配線加工

配線加工はギボシ端子を取付けていくだけなので作業的にはそれほど難しくはない。車両用ハーネスを手元に用意しておけば尚更加工しやすいだろう。

最終的な加工

ただ、今回はPumpkin VA0301Sにはスピーカーを接続しないため、配線加工はACC・バッテリー・GND・イルミネーション・パーキングブレーキとした。後日バックカメラを取り付ける予定なのでバック信号のラインも合わせて加工しておいた。

スピーカーとの接続については既に装着してある1DINのcarrozzeria DEH-7100が担うことになる。Pumpkin VA0301Sですべての機能をまかなうのは心許ないため、carrozzeria DEH-7100をアンプ兼故障時の保険として使い、中華Androidカーナビはマルチメディアプレーヤー兼ナビとして運用することにした。

ミニステレオ端子に変換するケーブル

音声についてはPumpkin VA0301SのRCA端子をミニステレオ端子に変換するケーブルを使う。これでZ33に搭載しているcarrozzeria DEH-7100の外部入力にVA0301Sの音声を入力できる。

この運用方法だとハーネスを分岐する必要があるが、ハーネスに分岐が用意されている配線はそれを利用し、分岐が無い配線はエレクトロタップで分岐をして対応することにした。パーキングブレーキとボディーアースはハーネスとは接続せず、ボディにまとめて落とし込む予定だ。

これで接続の準備は完了したが、あれこれ調べてみたいことや事前のセットアップのため机上テストをすることした。

■机上テスト(基本動作)

今回の机上テストは、小型のシールドバッテリーを使って12V電源を供給したのだが、ACCとバッテリーを結線した状態でバッテリーの端子に繋ぐと突入電流が大きく、テスターの10Aヒューズを焼き切ってしまった。机上でテストをする際は容量の大きな安定電源か12Vの鉛バッテリーを用意しないと起動ができないかもしれない。

中華Androidカーナビ

バッテリーに接続するとPumpkinのロゴが表示され、続いてAndroidのロゴが表示される。暫くするとAndroidですと言わんばかりのホーム画面が表示された。この一連の流れは時間にして30秒無い程度だろうか、コールドブートの起動時間は国内メーカーのナビとそれほど変わらない。

操作はAndroidそのものだ。スマホやタブレットPCを利用しているユーザーなら説明せずとも大凡の操作については理解できるだろう。タッチ操作の追従性もRAMが2GBあるためストレス無く動作するが、タッチパネルの反応については僅かに違和感を覚えた。

というのも、タッチパネルは一般的なスマホやタブレットPCよりやや強く指を押しつけておかないと正常に認識しないことがあったからだ。軽く触るとフリック操作がタッチ操作として認識されるなど少し癖があるのだが、これは机上テストをしている内に慣れてしまった。

アプリ

プリインストールのアプリの確認をしてみたが、音楽再生はアプリではなくOS組込みレベルの代物(com.ts.MainUI8)、動画再生はMX動画プレーヤー、ナビはGoogleナビ、他にもBluetooth(Bluetooth通話・音楽再生)、BT音楽(Bluetoothアプリの音楽画面になる)、ラジオ(ネットラジオではない)、AV入力(映像・音声の外部入力)、DAB+(日本では利用できないデジタルラジオ)といったカーナビ機能関連のアプリ。
※タッチショットはスクリーンショット用に後からインストール

Chrome、Googleアシスタント、Google Play、メール、音声検索、Gallery、といったGoogleやAndroid関連のアプリ。

他にも、ApkInstaller(APKファイル抽出orインストール)EasyConnection(iOS・Androidミラーリングアプリ)、GpsTest(GPSステータス表示)、Torque(ODB2通信アプリ)、Netflix、ファイルマネージャーがインストールしてあった。ナビについてはユーザーが起動するアプリを指定することが可能だ。

Google Playに対応しているため、タブレットPC向けやタブレットPC・スマホ兼用のアプリをインストールすることができる。スマホ専用のアプリなど一部のアプリは対応できずにインストールできないこともあるが、動作するかは別として他の端末でapkファイルを抽出してインストールするといった方法もある。

YoutubeやYahoo!カーナビをインストールしてみたが、アプリのインストールしながら音楽を再生する程度の負荷では、動作が遅れることや停止することはなかった。

前に車載していたAndroidタブレットPCはRAMが1GBだったため、GooglePalyやナビアプリは操作するだけでストレスを生み出す原因となっていたのだが、Pumpkin VA0301SはRAM 2GB搭載でのため、操作の快適性はカーナビとしての機能を使うのであれば必要十分といったところだ。

■USBとBluetoothの検証

最近では、国内メーカーのオーディオユニットにUSBコネクターが用意されているモデルが当たり前のようになっている。中華AndroidカーナビもUSBコネクターが用意されているが、国内メーカーオーディオユニットやカーナビのUSBコネクターとは対応する機器の範囲が違う。

なにせ中身がAndroidなのだ。USB OTG機能が搭載されているならば対応するUSB機器は広範囲に渡るはずだ。そこで、手元にあるUSB機器を接続してみ検証することにした。

WEBカメラ:カメラアプリを入れてみたが表示されず
ゲームパッド:使い勝手は別としてアプリの操作も可能
マウス:マウスカーソルが表示され操作が可能
キーボード:接続後Google Play開発サービスがエラーを吐いたが正常に入力可能
ポータブルHDDケース(USB2.0):SSDを入れて接続したがバスパワーでも認識
ポータブルDVD-RWドライブ:セルフパワーで認識(動作については後日の記事で)
Bluetoothドングル:認識せず

次にBluetoothの互換性についても検証してみた。が、BluetoothについてはAndroidということもあって勘違いをしていた部分もあった。てっきりマスター側のモジュールが搭載されているのかと思ったのだが、実際はマウスやキーボードと同じ扱いであるスレーブ側のモジュールが搭載されているのだ。

それもそのはず、カーナビとして考えたらごく当然のことであり、この点はAndroidとはいえスマホやタブレットPCとは大きく異なる部分だろう。また、USBの検証でBluetoothドングルを認識することはなかったため、おそらくBluetoothのマスター側になることはできないはずだ。

キーボード:接続すらできない。そもそもモジュールがスレーブ側なので同じ理由でBluetooth接続のマウス・GPSレシーバー・ステアリングキー等は使用不可。
iPhone8:特にトラブルなく接続ができた。音楽の再生も音質・安定性共に問題なし。ハンズフリー通話は怪しい部分もあったが可能。

USBについてはさすがAndroidといったところで、数多くの機器が利用できるのだが、Bluetoothについてはスレーブ側の機器という認識をしておかないと用意した機器が無駄になるかもしれない。

■机上テスト(車載専用機能確認)

次に、車載するに当たって独自にカスタムされている部分を調べていく。特に気になっていたのがキーをOFFにした後の動作だ。基本的にはキーOFFでACCが通電しなくなるとスリープに入り、指定した時間を経過化するとシャットダウンする。

キーをACCやONにしてACCが通電するとスリープ時間内だと瞬時に復帰し、スリープ前に使用していたアプリが稼働する。純正のアプリでないとレジューム再生に対応しないということはなかったので、この場合の動作は特に問題は無い。

だが、スリープ期間を終えシャットダウンをすると少し問題が出てくる。シャットダウンをすると次回の起動はコールドブートになるが、コールドブートは30秒程度の時間が必要で、プリインストールのアプリでないと音楽はレジューム再生どころか自動的に立ち上がることすらしてくれなかった。

また、コールドブートの度にボリュームがリセットされるのも問題だ。これについてはパスワードを入力して設定する特殊な設定画面で変更可能なので車載した後に調整をする予定だ。

他にも音声認識、映像入力、バックカメラ連動、イルミネーション連動、USBフラッシュメモリの認識など一通りのテストはクリアしたのだが、その検証で分かったのが映像の入力はAndroid基盤とは別制御になっていることだ。

前述の通りコールドブートだと起動するまでに30秒程度の時間を必要とするのだが、起動中でもバックカメラの連動は機能する。外部入力もアプリにはなっているものの、実際はモニターに映る映像ラインを内部で切り替える特殊な作りになっているようだ。

バックで車を出さないといけない際に30秒も起動を待つ必要があるのであれば面倒だが、そういったことを心配する必要は無いようだ。

音声関連も少し特殊な作りで、設定のイコライザ機能はRCA出力には反映されないがラウドネスはRCA出力にも効くという結果になった。サウンドプロセッサやアンプが別モジュールとなっているからだろうか。

■机上テスト(ベンチマーク)

CPU情報

ベンチマークをするためにAntutuをインストールして端末情報を調べてみたところ、Quad-Core ARM-V7 Processor(VFPv4,NEON)、クロック周波数598MHz~1118MHz 、端末モデルFFKJ FF-5000、GPU Mali-450MPと表示された。

海外の商品説明ではCPUの定格クロックを1.5GHz表記しているところもあったのだが、実際は1.1GHzの4コアだ。肝心のベンチマークについてはAntutuでは3D Benchが対応していないためベンチマークができなかった。

代わりに3DMARKでベンチマークテストを実施したが、結果はICE Storm Extremeで1768、ICE Stormで3378という結果となった。最新のハイエンドスマホと比べたら1/10以下の性能だ。

それもそのはず、CPU・GPUが2013年モデルのローエンド~エントリークラススマホ・タブレットPC向けのものなので、動画や音楽の再生は問題が無いが高負荷のアプリとなると別問題だ。間違っても3Dのゲームをやろうと思ってはいけない。

しかし、カーナビとして使う用途には必要十分なスペックであり、過剰な性能でもない分、価格も抑えられていると言えるだろう。

■机上テスト(消費電流)

一通りテストが終わったので他にも気になっていた消費電流を調べてみた。特に暗電流はバッテリー上がりの原因ともなるため気になっていたところだ。

結果は以下のとおりとなったが、今回の計測ではスピーカーを接続していないため、実際にスピーカーに接続した場合はアンプ回路でさらに多くの電流を消費することになるだろう。

起動時0.8A
アイドル0.8A
音楽再生0.9A
ナビ(Googleナビ停車状態)0.8A
動画再生(1080p)0.85A
tsファイル再生0.83A
Youtube(720p)0.93A
暗電流(スリープ時)0.23~0.26A
暗電流(シャットダウン時)1mA

不思議なことにmp3ファイルの再生が動画よりも消費電流が大きい結果になっている。なお、計測時に記録した最大電流は音楽再生中にアプリをインストールした際の1Aだった。
※電圧・アプリの効率・使うアプリにより画面の明るさが変わって消費電流も変化するため参考程度に

電流計測

ACCをカットしてスリープ状態に入った状態で暗電流を計測したが、0.23~0.26Aと暗電流にしては大きな電流となっていた。この状態が続くようではバッテリー上がりの心配をする必要があるが、一定時間経過をするとスリープからシャットダウンに切りかわる動作のため、暗電流が大きな状態は一時的なものだ。シャットダウンに切り替われば1mAと微々たる暗電流になるため、バッテリー上がりの心配は無用だ。

この動作設計はSAでの休憩や給油など、一時的にキーをOFFにすることがあっても、キーがACCやONになった際に即座に起動してキーOFF前の状態を再現するためのもので、スマホやタブレットPCのスリープ機能が時間限定で使えるものと考えればよいだろう。

シャットダウンに切り替わる時間

なお、設定でスリープからシャットダウンに切り替わる時間をある程度設定することができるようになっている。
※0minでも15秒程度切り替えに時間がかかる

当然、シャットダウン後はコールドブートになるため、起動に30秒程度時間がかかるが、バッテリーが上がってエンジンが始動できないよりは遙かにましだ。ただし、何度も言うが、プリインストールの音楽アプリを使わないとレジューム再生ができないのは不満だ。

■まとめ

初めての中華AndroidカーナビとしてPumpkin VA0301Sを購入してみたが、中華のお粗末さが所々見られるものの、AndroidタブレットPCからの移行としては実用性に期待が持てる性能と完成度であった。

国内メーカーのカーナビと比較する代物ではないのだが、カーナビの精度や地デジ対応、細部の詰め具合など、比較すれば劣る部分は多いのも確かだ。しかし、汎用性とマルチメディア性能、アプリ追加による拡張性についてはAndroidだけあってPumpkin VA0301S含む中華Androidカーナビ全般に軍配が上がるだろう。

しかし、Androidカーナビとは良く考えついたものだと思わずにはいられない。他社リソースで作られたOSに少し手を加え、汎用のAndroid基盤と既存モジュールを組み合わせる。これは、枯れた技術を上手に使っているともいえる。中華メーカーのこういったところには感心してしまう。