Z33スポーツマフラー

Z33はノーマルの状態だと非常に静かだ。GTカーとしての視点からしてみればそれは良いことのように思えるが、スポーツカーとすれば物足りない。この2年間、排気系はノーマルのままで乗っていたのだが、踏み込んだときぐらいは図太い音を立てて加速して欲しいと常々感じていた。

そんなこともあり、スポーツマフラーについては前からいくつかの候補を考えていたのだが、Z33でスポーツマフラーに交換するメリット・デメリットの話も合わせたうえで、個人的にこれだと思うスポーツマフラーを選考した。

■音か性能か見た目か

スポーツマフラーをファッションパーツと考えているドライバーも多いだろう。良い音や迫力のある外観が大切という考え方はスポーツマフラーの要素として大小個人差はあれ選択時の指標になる。

だが、スポーツマフラーは何も見た目や音だけではない、ファッションパーツとしての要素が強いのは否定しないが、スポーツ走行を重視するなら軽量で抜け良いスポーツマフラーが欲しいところだ。

純正の排気系は様々な規制を十二分に合格する程の余裕があるが、その余裕を得るために排気ガスの抜けが悪い。そのため、よほど酷い代物でもない限り社外品のマフラーにしただけで排気ガスの抜けは良くなる。

当然、スポーツマフラーは性能の向上を狙って排気ガスの抜けを重視して設計されているのだが、抜けが良くなるほど音も比例して上がっていく。しかし、近接排気騒音が規制値を超えたら公道では走行できないし、年々、車の騒音については規制が厳しくなっていく傾向は迷惑な行為をしているドライバーによる結果ということを考えると、規制の範囲内で選ぶことを厳守したい。

■排気の効率化で馬力向上

スポーツマフラーはパワーアップが主たる目的になるのは上記のとおりだ。だが、パワーアップと言ってもZ33の場合では何がどの程度変わるのかというと、高回転域のエンジン出力が上昇するが、それはほんの僅かなものでしかない。

過給器エンジン搭載車の中には馬力自主規制のため、あえて性能が低いエアフィルターやマフラーを装備して性能を落としているモデルもあったが、そういったモデルではマフラーを交換するだけでエンジン出力が1割以上向上ということもあった。
※過去では32~34GT-Rや4WD 2Lターボ車、現在はターボモデルの軽自動車が該当

だが、Z33は馬力自主規制に合せて性能を大きく絞っているわけではなく、NAのため吸排気系を交換しただけでは大幅なパワーアップは望めない。事実、FUJITSUBO Legalis Rの実測値では馬力は10馬力も向上していないし、トルクについては1kg・mの向上と微々たるものでしかない。

他のメーカーについては数値を出していないが、他者と大きく数値が変化するのであればメーカーとしては大手を振って宣伝するだろうし、ユーザーの実測値をみるにそこまで大きな差はないと考察できる。

しかし、だからといって疎かな選択をしてはいけないのが排気系だ。排気系を交換した後の現車セッティングでパーツ選択を間違えると思ったほどの性能向上が見込めなくなるため、エンジン出力を重視するのであれば、可能な範囲で抜けが良いマフラーをしっかりと選びたいところだ。

が、困ったことに抜けがよいことは必ずしもメリットに繋がっているだけではない。

■もちろんデメリットも・・・

NAエンジンは抜けの良いマフラーにすると馬力は上がるが低速トルクが落ちるといわれる。この答えはYESだがNOでもある、正確に言うならば取付け後に燃調をするならトルクの低下を抑制することが可能だが、取付けただけでは低回転時のトルクが落ちる可能性は否めない。

この原因の1つはエンジンのバルブオーバーラップという制御にある。バルブオーバーラップとはエンジンの吸気バルブと排気バルブが同時に開いている状態を示すものだが、なぜ両方のバルブを開く必要があるかというと、排気と吸気を効率化できるからだ。

エンジンのピストンとバルブの位置関係が分かる図を見てみよう。排気サイクルの際にピストンが上死点(OHV・SOHC・DOHCエンジンであれば最もピストンがバルブに近い位置にある状態)に位置し排気行程が終了したとする。

リンク先の図のように排気工程で排気バルブしか開いていない状態だと燃焼室の僅かな空間に残った排気ガスが残ってしまい、次の吸気行程で排気ガスが混合気と混ざってしまうため燃焼効率が落ちる。

そこで、燃焼室に残った排気ガスを抜いてしまう必要があるのだが、ピストンは上死点以上に動くことはないため、ピストン運動では解決ができない。そこで、排気側の力を借りることになる。

排気ガスは排出側(マフラー)に向かって流れているが、この流れに引っ張ってもらう形で燃焼室の排気ガスを抜き取るのだ。シリンダーの排気バルブのみ開いている状態だとシリンダー内には何も吹き込まず残った排気ガスが抜けきらないため、吸気バルブも同時に開いて排気ガスを抜くと同時に混合気をシリンダー内に吹き込み、排気と吸気を同時に効率化する。

だが、ここで抜け(排気効率)の良いマフラーに交換するとする。排気抵抗が減少することにより排気側の圧力(背圧)が低下し、バルブオーバーラップが発生している際にシリンダー内に残った排気を引き抜いたうえ、せっかくシリンダー内に入った混合気まで引き抜いてしまう。そうなると燃焼するガソリンの量が減るわけで、当然トルクは減少してしまう。

代わりに、抜けの良いマフラーは高回転時に排気ガスを効率良く排出できるため、ノーマルマフラーのように排ガスが詰まることで背圧が上がり、バルブオーバーラップの際に排気ガスがうまく抜けないという症状が出にくくなる。これが、マフラーを交換すると馬力は上がるが低速トルクが落ちるという現象の原因だ。

もっとも、これも原因の一つでしかないのだが、実際は排気パーツの口径や曲がり具合により発生する脈動や乱流、吸気側の効率など様々な要因が関わってくる。しかし、スポーツ系の吸排気系パーツは総じて高回転域の吸排気効率を重視しているものが多いため、吸排気系パーツをボルトオンしただけでは低速トルクが落ちるのは否めないだろう。

ただし、Z33のように太いトルクを生み出すエンジンを搭載しているのであれば、その影響は微々たるものであり、感じられるレベルでトルクに影響が出るかといわれると、まず無いと言えるだろう。実際にリアピース交換程度ではトルクが痩せたと感じられることはなかったからだ。

■可変バルブタイミング機能による最適化

低速トルクが落ちるとなると街乗りの快適性が犠牲になる。だが、Z33に搭載されているVQ35DE、VQ35HRエンジンにはこの問題を解決することができる可変バルブタイミング機能が搭載されている。

可変バルブタイミングは最近のエンジンには標準的に搭載されている機能で、バルブが開閉するタイミングを一定の範囲で変更することができるユニットだ。VQ35DEではVTC(CVTCとeVTC)と日産が呼称しているユニットが備わっている。

この可変バルブタイミングを再調整することより、上記のオーバーラップが発生するタイミングや持続時間を調整することが可能になり、抜けが良い低回転時はオーバーラップを短く取り、混合気まで抜けることがないように調整し、高回転時はオーバーラップを長めに取り、排気ガスをしっかりと引き抜けるように調整することで低回転から高回転まで全域にわたって性能の向上を見込める。

Z33では、前期型は吸気側のみ、中期型から後期のVQ35HRは吸気・排気共に可変バルブタイミングが備わっており、後期になるほどオーバーラップの調整幅が大きくなっており、その分、細かな調整が可能になると考えて良いだろう。

なお、可変バルブタイミングの調整はROMチューンといってECUのデータを書き換えるといった方法が必要になるが、この費用が低価格帯のマフラーが買える価格になっているため、ある程度吸排気のパーツを交換してから行なった方が費用対効果は高い。

排気系はエンジン側に向かって交換していくほど排気効率が向上して抜けが良くなっていくため、リアピースから触媒かエキマニまで交換した段階でROMチューンをすると劇的な変化が楽しめるだろう。

もちろん、予算に余裕があるのであれば、マフラーを交換した段階でROMチューンをしても効果は見込める。排気効率の向上以外でもエンジン出力向上の余地は残されているし、電子スロットルのフィーリングといった電子制御系も好みに合わせて変更できる。

■軽量化とマス集中

スポーツ系のマフラーに交換した場合、馬力が上がる効果以外にも軽量化とマス集中というメリットも付いてくる。特にチタンマフラーの重量に関しては驚くほど軽く、僅かとはいえ車の挙動に影響を与えるレベルに達していると感じる。

軽量化に関しては、軽ければ軽いほど慣性的に有利になる。軽いほど加速・減速で有利になるだけでなくコーナリング進入時の挙動が軽くなるため、車の三要素「走る・曲がる・止まる」の動きが機敏になっていく。これは軽量化によるものではあるが、マス集中による効果によるものでもある。

車の重量に関する要素としては軽量化と前後重量配分を良く目にするが、マス集中については前後重量配分よりも重要な要素として語られることがある。

このマス集中とは、重量物を車体の中央(重心)に集中させることである。重たいパーツは車体の外側にあるよりも車体の中心に近いほど車の挙動は機敏になる。

ミッドシップやフロントミッドシップは重量のあるエンジンを車体の中心に近づけることでマス集中を狙った設計なのだが、動きが機敏になるということは同時に挙動が乱れやすく、限界付近では安定した走行が難しくなるデメリットもある。

ミッドシップの車が「限界は高いが破綻したときはリカバリーが難しい」と言われる所以はそこにある。

では、Z33はどうかというと、フロントミッドシップではあるが前後重量配分が53:47とややフロントヘビーであり、体感では数値以上にフロント側が重く感じる。これも、エンジンがややフロント寄りにあるからだろうか。

そのため、リアの軽量化をした場合、コーナリングでリアのトラクションが抜けやすくなる現象が出てくる。

軽量化については材質と形状次第で、ステンレスなら砲弾ストレートタイプで10kg近い軽量化が見込めるが、Z33で主流のサイレンサーが大きなスポーツマフラーでは2~5kg程度の軽量化しか見込めない。

その点チタンは軽量化に最適で、ものによっては10kg以上もの軽量化を実現できるものもある。もちろん、チタンだけに価格はステンレス製のものより倍以上のコストがかかるうえ、チタンの溶接は難しいため補修を含めて扱いは慎重にならざるを得ない。

■余裕のあるエンジンパワーが生み出す「静と響」

スポーツマフラーといえば音の変化を楽しむことができるパーツでもある。スポーツマフラーのモデル1つ1つどれも個性的な音を響かせているのだが、音量については総じて上がってしまう。

気分が乗っている際は良いだろうが、長旅で疲れている時や街乗りの際に大きな音が出るのでは自分にも回りにも迷惑だ。スポーツマフラーの音を楽しみたいが、静かにして欲しい時は純正のマフラーのように静かになる都合の良いスポーツマフラーが有ればよいのだが・・・、実は保安基準適合品のZ33用のスポーツマフラーはそんな都合の良いスポーツマフラーが多い。

エキマニや触媒を交換すればアイドリング時から派手な音を出すようになるが、中間パイプからリアピースの交換までなら街乗り時に使う3,000回転まで静かで、そこからスロットルを開けて加速をしだすと図太い音を出し始める。

これも、Z33の余裕のあるエンジンパワーにより実現しているわけで、私の求める「GTスポーツ」の考え方に合致したものである。

だが、高回転時まで甲高い音を鳴らし続けたいといった場合や、排気効率を突き詰めるとエキマニ以降の交換は必要で、今後さらにエンジン側に向かって排気系パーツを交換する予定だが、排気系はエンジン側に近いものを交換するほど音が増大しやすい。

Z33では、音量が大きめのスポーツマフラーの場合だと触媒やエキマニを交換した段階で規制値を越えることもあるため、排気系に関してはY時パイプにサイレンサーが入ったタイプを選択して排気効率を上げつつ音を抑える予定だ。

■俺の選ぶZ33マフラー

ここでスポーツマフラーを交換するにあたって候補として出てきたものを紹介しておきたい。もちろん、全て保安基準適合品だ。

アミューズ R1 TITAN


残念なことに販売は終了しているのだが、Z33の保安基準適合品スポーツマフラーで最も良いものを選べと言われればR1 TITANと答える。チタンによる軽量化はもちろん、保安基準適合品の中では攻めた音量で美しさと迫力を併せ持つ。
※現在販売されているR1 TITANシリーズはパワーハウス・アミューズから現在販売している会社へ裁判の後和解を経て委譲された模様

抜けを最優先して設計しているため高音域は控え目なのだが、音量が大きく経年劣化が心配ではある。排気系の交換で簡単に保安基準の規制値を超えるという話もあるため、マフラー以前の排気系を交換するのであれば消音対策は必須だろう。また、JASMA未加入メーカーのため業者に取り付けを断られる可能性もある。

性能を最重視、しかし音質や外観も大事というならR1 TITANシリーズだろうが、中古でしか手に入らないのが痛いところだ。

HKS SSM


HKSのスポーツマフラーの中では抜けを重視しつつも音質に拘ったモデル。Y字パイプ近くから管を分岐させてリアピースに導く構造のため重量的には不利だが、同じ方向性のSACLAM Z33 SILENCER KITと比較すると抜けが良い構造に見える。音量は管を絞って高音成分を強めに出していることから経年劣化による音量増には要注意だ。

抜けと音質を両立させ、HKSブランドが持つ信頼性や品質に魅力を感じるならこれだろう。

SACLAM Z33 SILENCER KIT


究極までに音質に拘ったモデルでステンレスとは思えない高音が魅力的なスポーツマフラー。その音に魅了され、Z33を含めSACLAMを装着しているドライバーは多い。

スポーツマフラーの中ではファッションパーツに近く、高音域を強調するために管を絞った構造になっているためか、抜けについては燃調を突き詰めると不満が出やすいようだ。

音量も攻めた設計のため保安基準適合品とはいえど大きめで、経年劣化が心配ではある。

抜けは二の次、音質こそが重要だと思うならサクラム以外の選択肢はまず無いだろう。メーカー指定のエキマニを入れると音質はさらに良くなる。

FUJITSUBO Legalis R


抜けが良好かつ静かなスポーツマフラーが欲しいというのであればFUJITSUBOのLegalis Rをお勧めしたい。価格も上記の3つのモデルと比べると半分程度と導入コストは良好だ。

安価でもZ33の純正オプションパーツに採用された(全く同じ物ではない模様)実績があるだけに品質については折り紙つきといえる。

音量を抑えるため大きめのサイレンサーを装備していることから重量的には不利ではあるが、静かで車検の心配をする必要が無いスポーツマフラーが欲しいならこれだろう。

柿本改 HYPER FULLMEGA N1+ Rev.


Z33のデュアルマフラー構造をあえて捨て去る漢の1本出しマフラー。いかにもスポーツマフラーですという形状で、ノーマルのリアバンパーとの組み合わせでは不釣合いなレベルに達しているといえる。

しかしながら、単純な形状ゆえに安価でステンレスモデルでも10kgもの軽量化が見込めるうえ、純正のサイレンサーが埋めているスペースが開放されるため、リアデフクーラーなどのクーリングパーツを設置するスペースが生まれるという他の形状には無いメリットも併せ持つ。

HYPER FULLMEGA N1+ Rev.はテール径115φと大迫力だがパイプ径は両モデル共に70φと思ったほど大きくない。音量は保安基準対応マフラーの中では大きめだが、保安基準対応マフラー故、あえて絞って音が出ないようにしているのかもしれない。
※R1 TITANエクストラは76.3φ


購入時の注意: 現在販売されているR1 TITANシリーズはパワーハウス・アミューズから現在販売している会社へ裁判の後和解を経て委譲された模様。SACLAMは直販かチューニング系ショップにて注文取り付けが基本