サーモスタット

Z33に取付けたドライブレコーダーは駐車監視モードを常時録画に設定して録画をしているのだが、夏になると車内の暑さと自己の発熱が合わさり、録画が停止する問題が出てきてしまい、前年に多数の対策を施して解決している。

最後の過熱対策は、ソーラーチャージャーで電力を供給し、PC用ケースファンを稼働させて強制的に車内の空気を外に排気するという方法だった、だがソーラーチャージャーの供給電力では全力で回転するほど電力が供給できず、日がある程度昇らないと始動すらしないという問題を抱えていた。

そこで、ドライブレコーダーで消費する電力を補うために装備している、ソーラーチャージコントローラーから電源を供給することで解決する方法をバッ直作業に合わせて施工した。

■電力供給の共有

配線を接続

今までの組み合わせは、ALLPOWERS カーソーラーチャージャー 18V 7.5WとX-FAN RDL1225S(17SP)の間にヒューズを挟み接続しているという単純な組み合わせだ。日が昇りある程度の電力を供給可能となるとケースファンが回転し始め、日が落ちると停止するという単純かつ合理的な仕組みではある。

だが、カーソーラーチャージャーの性能ではケースファンの始動電流を供給できる時間帯が5月でも晴天時の10時~15時頃と短く、車内が最も暑い時間帯をカバーしているものの、ある程度車内が暑くなった状態でようやく稼働する。加えて、回転しても電力供給が追いつかず定格の風量を発生させることができていない。

リアガラスへの設置

また、50Wソーラーパネルの横にカーソーラーチャージャーを追加しているため、これ以上ソーラーパネルをつけるのも好ましいとは思わず、メインの50Wソーラーパネルから電力を供給することができないかと考えていた。

車内が暑い日は晴天時なので当然発電量も多い。ならば充電量にそれほど影響しないのではと考え、あるものと組み合わせて回路を組み直すことにした。

■バイメタルサーモスタット

メインの50Wソーラーパネルから電力を供給する場合、非常に重要な課題を解決しておかないといけない。それは、必要なときにのみケースファンが稼働するようにすることだ。

今回は、50Wソーラーパネルから直接電力を供給する訳では無く、50Wソーラーパネルに接続されたチャージコントローラーから電力を供給することになるため、電圧カットオフによるバッテリーの保護と時間帯による負荷端子のON/OFF制御はチャージコントローラーが担う。

だが、チャージコントローラーは曇りや雨で発電量が低く、車内もさほど暑くない環境を認識してON/OFF制御できる機能は備わっていない。そこで用意したのがバイメタルサーモスタットだ。

サーモスタット

バイメタルサーモスタットは温度によって内部の異なる金属が膨張・収縮することでスイッチのON/OFFを切り替える電子部品になる。サーモスタットはいくつか種類があるが、バイメタルサーモスタットは精確性に欠ける代わりに、それ自体が電力を消費しないため、今回のような消費電力を極力抑える必要がある場合にはうってつけだ。

今回の場合、温度が設定以上になるとオンになるノーマルオープンタイプが必要なので、小売りされている最低温度40℃のノーマルオープンタイプのものを購入してみた。

最近は、ネットで電子部品を当たり前のように購入することができる良い時代なのだが、注意が必要だ。というのも、Amazon等で良く見かける中華メーカーの電子部品は精度が悪く、品質にバラツキがあるものが多い。そのため、歩留まりを考慮して5個入りを2セット購入しておいた。

お湯に漬けてテスターで性能を検証してみたところ、10個中3個が2度未満の精度で今回の用途では合格レベル、残りは2度~3度の精度が3個、4~5度の精度が2個、5度以上が2個と散々な結果だった。

バイメタルサーモスタットは5度区切りで設計されているので、5度以上の精度差がある個体は不良品といっていいだろう。35度程度の低温側に酷い精度の個体があると逆にうれしかったのだが、高温側に精度が酷いのでは使えない。そういった事例もあるようなので期待はしていたのだが、今回は残念ながら大外れだったようだ。

■バイメタルサーモスタットの組み込み

バイメタルサーモスタットの組み込みは非常に簡単だ、電源コードの途中に割り込ませるだけで機能を発揮するので、チャージコントローラーの負荷側端子から出たコードの途中に割り込ませる。

ラゲッジルームに出した

保護ためヒューズを組み込み、マイナス側にバイメタルサーモスタットを取付けるのだが、バイメタルサーモスタットそのものが温度センサーのようなものなので、ラゲッジルームに出るようにコードを伸ばして接続しておいた。

その後、チャージコントローラーの設定を切り替える。電圧カットオフは11.6Vに設定して鉛スターターバッテリーの保護をする。これで、負荷端子の制御をONに切り替えればケースファンが全開で回転するはず・・・と思ったら、動かない。

配線がスッポン

どうも、作業中にコードを引っ張ってしまったようで端子が抜けた状態になっていたので、接続をして確認するも、何故か動かない。どうやら、チャージコントローラー(Tracer 1210AN)の負荷端子の制御はManual ModeをONにしただけでは通電しない仕様のようだ。

付加端子設定

負荷端子を通電させるには、3つON/OFF制御のうちいずれかを設定する必要がある。今回はReal-Time Control(時間によるON/OFF制御)を設定して、8時~17時まで負荷端子から電力が供給される設定にした。これでケースファンが回転し始め、勢いよく車内の空気を排出しだした。
※内部の水晶精度が酷いのか1週間で数分も内部時計に誤差が出るため適時補正が必要

電力の供給は十分

テスターで供給電圧を計測してみたが、ALLPOWERS カーソーラーチャージャー 18V 7.5Wに接続した際は7.89Vだったが、変更後は12.22Vと電力の供給は十分な状態で、ケースファンはいつもより大きな音を立てて稼働している。

チャージコントローラーのステータスでは1.74Wの消費電力となっていたので、発電した電力の約13%を消費していることになるが、晴天時の発電総量は90Wh~110Wh/日にもなるため、指定した時間全て稼働したとしても約15.7Wh/日となり、1日分のドライブレコーダーの消費電力(75Wh)はほぼ確保できている計算になる。
※電圧の状態により消費電力が1.32W~1.84Wまで変化するため誤差がある

CTEK BATTERY SENSEの残量ステータス

走行充電を加味すれば、車内が暑くなる時期にバッテリーの残量を気にする必要性は無いだろう。現に、CTEK BATTERY SENSEの残量ステータスは100%にほぼ張り付いた状態が続いている。

■車内の暑さが微減

換気用のケースファンが全力で稼働するようになったとはいえ、残念ながら温度警告が出なくなるほどの劇的な効果はなく、6月上旬、27度越えた晴天の14時頃に温度警告ランプが点滅していた。
※録画は停止していない

だが、換気流量が明らかに変化したにもかかわらず、全く効果がないという訳ではないだろうと思い、数値で検証できるようにサーモロガーの記録で効果を検証してみることにした。

1年前の8月中旬~下旬にかけて検証した際のデータは以下の通りだ。

・強制換気なし
最高気温31.9度 車内最高温度51.4度 温度差19.5度

・強制換気あり( 3Wパネル+CF-1212025LB)
最高気温29.2度 車内最高温度44.7度 温度差15.5度 冷却効果-4.0度

・強制換気あり(7.5Wパネル+ X-FAN RDL1225S(17SP)
最高気温35.7度 車内最高温度48.5度 温度差12.8度 冷却効果-6.7度

・強制換気あり(7.5Wパネル+ X-FAN RDL1225B(17SP)
最高気温32.5度 車内最高温度46.6度 温度差14.1度 冷却効果-5.4度

※最高気温はアメダスのデータ参照
※温度計測箇所は常に日陰となる助手席後部の収納メッシュ部分
※車両は日陰にならない箇所に駐車
※計測は8月中旬から下旬にかけて計測

今年は、運良く同じ最高気温の日があったため、その日を基準に検証してみた。時期的に半月ずれているため完全な比較とはいえないが、梅雨明けの暑い時期で比較しているため、説得力のある参考データにはなるだろう。

・強制換気あり(チャージコントローラー接続+ X-FAN RDL1225B(17SP)
最高気温31.9度 車内最高温度44.3度 温度差12.4度 冷却効果-7.1度

※最高気温はアメダスのデータ参照
※温度計測箇所は常に日陰となる助手席後部の収納メッシュ部分
※車両は日陰にならない箇所に駐車
※計測は8月上旬

一応、車内温度の冷却効果は若干ながら増加したといえる結果ではあるが、その時その時の日照条件により中途半端に動くのではなく、温度と時間で適切に制御されて全力で動作するという改善のほうが個人的には大きい。

取り付けてから2ヶ月以上経過しているが、過電圧によるケースファンのトラブルもなく、ドライブレコーダーの駐車監視モードも稼働し続けていることから、ドライブレコーダー過熱防止対策についてはこれで一旦終了とした。