ドライブレコーダーの過熱対策


ドライブレコーダーの駐車場監視モードによる暗電流が大き過ぎてバッテリーを消耗する対策に追われている間、実はもう1つの問題に悩まされていた。それがドライブレコーダーの過熱問題だ。

駐車監視モードを利用している際、天気が良く、車内の温度が上昇するとドライブレコーダーが過熱して停止することが頻繁に起こっていたため、暗電流の件と並行して対策を模索していたが、常時稼働に耐えられそうな方法が完成したので公開することとした。

■皮肉な太陽

ドライブレコーダーの駐車場監視モードによる暗電流は、ソーラーチャージャーによる充電で対策をしている。天候が良ければ発電量が増えるが、皮肉なことにドライブレコーダーが過熱する問題を引き起こしてしまう。

この問題は、直射日光による車内及びドライブレコーダー本体の加熱とドライブレコーダーの稼働時に発生する発熱が加わって発生する。

コムテックZDR-13

現在使用しているドライブレコーダー コムテックZDR-13は使用環境が-10~60度までとなっており、限界を超えてしまうと録画を自動停止して本体を保護する。走行中に録画する常時録画のみ利用するのであればエアコンの冷却により問題なく稼働するが、エンジンが停止している駐車監視モード中はそうもいかない。
※実際は60度以上で警告となり更に上昇すると録画停止となる

さらに困ったことに、一度過熱した状態にから録画が可能な状態までエアコンで冷却するためには5分以上の時間が必要で、その間に事故を起こしても録画は一際されないというおまけ付きだ。

ドライブレコーダーの本体温度は89.5度

実際にどの程度熱くなっているのか調査してみたが、過熱で停止した際のドライブレコーダーの本体温度は89.5度となっていた。

直射日光の当たるダッシュボードで66.4度

この時の車内の温度は、日陰で51.9度、直射日光の当たるダッシュボードで66.4度となっていたので、直射日光と車内の熱にドライブレコーダー自体の発熱が加わることで限界を超えたと予想される。

暗電流の件で苦労してドライブレコーダーの駐車場監視モードを常時録画に耐える環境に持っていったというのに、過熱で録画停止をするのではその苦労も無駄になってしまう。そこで、夏に向けて過熱対策をしてみることにした。

■対策は遮光と冷却

プラダンをフロントガラスに張り付け

ドライブレコーダーの過熱については直射日光によるところが大きいと予想し、適当なサイズのプラダンをフロントガラスに張り付けてドライブレコーダーが影になるように調整してみた。

しかし、この予想は外れた。車内が暑いうえ、ドライブレコーダー自体の発熱も加わり過熱停止はこれでも避けられなかった。

しかし、ドライブレコーダーの温度よりも日陰になっている車内の温度が低い。ならば、シェードで日陰にした状態で強制的に風を送り込めばドライブレコーダーを冷却することができると考え、PCで使用するケースファンによる冷却を試みた。

12Vの4cmケースファン

テストのため、USB電源アダプターから5Vを供給し、自作変換アダプターで12Vの4cmケースファンに接続してみた。12Vのケースファンを5Vで動かす手法は自作PCの静音化では知られた手法だ。

温度は62.9度まで低下

この状態で、真昼まで2時間程度動かし続けたが、ドライブレコーダーの温度は62.9度まで低下しており、警告表示は出ているものの過熱で停止する事はなかった。これで対策方法はほぼ決まった。

■プラダンシェードとケースファン

ドライブレコーダーの過熱対策はシェードにより直射日光を避け、ケースファンにより冷却風を当てることにした。しかし、ケースファンは電源を供給する必要があるが、ただでさえドライブレコーダーの暗電流が大きいため、バッテリーから電源を供給することは避けたい。

そこで、ここでもドライブレコーダーの暗電流対策として使用したソーラー発電を今回も採用することにした。

5V80mAを消費

既にケースファンの電圧と消費電流は計測済みで、5V 80mAが供給できるソーラーパネルを用意すれば冷却に必要な風量が出せるのだが、問題はソーラーパネルの設置箇所だ。大きすぎると設置箇所に制限が出てくるし、小さ過ぎても電力供給不足になる場合がある。
※使用したケースファンはADDA CF-40FS

2種類のソーラーパネル

とりあえず、仕様では余裕のある5V 1.2Wと6V 1Wの2種類のソーラーパネルを試して見ることにした。サイズはそれぞれ5Vが110 mm×69mmで6Vが110mm×60mmだ。このサイズなら、シェードを設置する予定のセラミックドット部分に余裕で納まる。

どちらにするかテスト

ソーラーパネルをどちらにするかテストをしてみたところ、6Vのソーラーパネルは回転数が高いが、パネルサイズが小さいため電流も小さい。そのため、ケースファンが回転し始めるための始動電流を確保するために5Vのパネルよりも光が必要になる。対して、5Vのパネルはサイズが大きいため発電電流が大きく始動電流を確保しやすい。しかし、5Vなので回転数が若干低いという結果になった。
※始動電流さえ確保できれば2Vでも回転した

車に例えるなら発進加速か最高速どちらを取るかという選択のようなものだが、屋外でのテストでは、曇っていても両者ともにケースファンを回転させるには十分な環境であることが分かったため、冷却効率を重視して6Vのソーラーパネルを選択することにした。

次に設置予定箇所で発電テストをしてみたが、セラミックドット加工の裏側ではソーラーパネル日陰ができるため出力が低下する。実際に両方のソーラーパネルを仮設置してみたが、晴天の真昼でもファンが弱々しく回るだけで実用には耐えられそうにない。仕方がないので、ソーラーパネルの設置箇所はダッシュボードの隅に設置することにした。

直射日光を遮るシェードについてはプラダンを使う。プラダンはPP(ポリプロピレン)という樹脂を使用しているが、入手性が良好なプラスチック樹脂の中では耐熱温度が高く、暑い車内でも変形しにくい。また、プラダンは中空構造のため断熱効果も見込める。まさにうってつけの素材だ。

セラミックドット施工箇所に合せて加工

このプラダンをセラミックドット施工箇所に合せて加工していく。バックミラーとドライブレコーダーのマウントについては、取り外せるところまで外した状態を元にシェードを設置するため穴開け加工をする。

ダイノックフィルムのカーボン

プラダンを切り抜いたらカーボン風シートで覆っていく。今回はダイノックフィルムのカーボンCA-421を使ったが、つや消しなので目立たず見栄えも良い。

フレームを製作

ソーラーパネルも同じようにプラダンとダイノックフィルムを使ってフレームを製作しておいた。雰囲気が良くなったので、ダッシュボードに置いても変に目立つことは無いだろう。

ヒューズホルダーも用意

また、配線の途中にヒューズを組み込んでおくため、ヒューズとヒューズホルダーも用意しておいた。使用するヒューズは0.1Aガラス管ヒューズになる。5V駆動時は80mAの電流が流れるため容量的には十分と予想している。

ロッカースイッチを用意

最後に、ケースファンが不要になる際は止められるようにスイッチも取付けることにした。スイッチは純正のスイッチパネルカバーにロッカースイッチを取付ける予定だ。

■シェードとケースファンの設置

シェードの設置箇所

シェードの設置箇所は既に決まっているため、ドライブレコーダーとバックミラーを取り外して上部をフロントガラスと天井内装の隙間に滑り込ませ、下部はバックミラー付け根の黒塗り部分に両面テープで固定する。しかし、問題はケースファンの設置箇所だ。
※高温対応(90度)の両面テープを使わないと熱で両面テープが剥げる

バックミラーのマウンター

本当はフレキシブルアームに取付けて自由に角度と位置を決められるようにしたかったのだが、調整が不要だったこともあり、バックミラーのマウンターに車内向けの両面テープで貼り付けた。

フレキシブルアーム風に取付けるならば、適当な番線をカットし、ケースファンのネジで共締めし、バックミラーのマウンターやアームにステーを巻いて固定したら、反対側の針金をステーに取付けたネジで共締めにしておくという方法が使えるだろう。番線の見た目が気になるならコルゲートホースでも巻いておけばよいだろう。

ケースファンへの配線に関してはソーラーパネル側から設置していった。ダッシュボードの上で置く場所を決めたら、そこからAピラーの内装を剥がして運転席フロアに配線を落とす。

Aピラーの内装は付近のウェザーストリップを手前に引いて抜き取ったら、内装剥がしで内装を助手席側に押して剥がす。ファスナーが取れたら、天井側に引き抜けば根本部分が取れる。

Aピラーの内装を剥が

Aピラーの付け根にある空間から配線を運転席のフロア側に落とす。配線ガイドを使い運転席のフロア側に配線を押し出すかフロア側から抜き出す。

ここでスイッチをVDCスイッチの横に取付けるため、スイッチが付いている内装を外すことにした。

3箇所ほどネジを外す

このスイッチを取り外すには、ステアリング下のカバーを取り外す必要がある。3箇所(写真の箇所・ボンネット開閉レバー裏・センターコンソール側下部)ほどネジ留めされているので、ドライバーでネジを取ったら上部をシート側に引くようにしてツメ部分を抜き出す。

スイッチにアクセス

スイッチ裏へのアクセスはドア側だけでツメを外せば十分なので、ここまで開ききったらスイッチを奥に押し込むようにして取り外す。

スイッチの加工

スイッチの加工はドリルで穴を開けカッターで縁を整えてロッカースイッチを埋め込んだ。

ロッカースイッチを埋め込み

トグルスイッチがいくつか手元にあったのだが、純正の内装にマッチングするように、今回は小さなロッカースイッチにしてみた。

ギボシ端子を取りつけ

加工後にスイッチをパネルに戻し車両側の作業を再開する。電工ペンチでギボシ端子を取りつけてスイッチにケーブルの片方を接続する。ここから再びダッシュボード上に配線を戻しAピラーの上部まで伸ばしていく。

配線は天井内装の裏側を通す

Aピラー上部からバックミラー上部への配線は天井内装の裏側を通す。ケーブルは細い順に奥側に押し込まないと隙間から出てきてしまう。ケーブルを隙間に挟み込んだら、内装剥がしで配線を押し込み天井内装の裏側にケーブルを入れていく。

途中にヒューズを取りつける

ここで配線の途中にヒューズを取りつけることにした。ヒューズ交換のことを考え、Aピラーの根本部分の配線に割り込ませる。ソーラーパネルからロッカースイッチへの配線の途中をカットしてヒューズボックスを割り込ませてヒューズは取付け完了だ。

ギボシ端子が見える様に固定

再びバックミラー側の配線に戻り、ケースファンと配線を接続する。ギボシ端子で接続したので隠しにくくなってしまったが、ここはあえてデザインとしてギボシ端子が見える様に固定しておいた。

隙間を余ったカーボンシートで埋める

ついでにシェードの一部にできた隙間を余ったカーボンシートで埋めておいた。シェードが熱で垂れてくるため、それを防止する意味もある。

なお、シェードはドライブレコーダーが影になるようにしているため、どうしても撮影時に一部が写り込んでしまう。しかし、交差点で停止している際に信号機が隠れるといった程ではないため、今のところ機能的に問題は無いとしている。

■梅雨明けの実践投入

取りつけが終わった時期は外気温が30度を超える日が続く状態だったが、さすがにテスト時期と違い、夏本番という状態ではドライブレコーダーの温度も上がり気味で、冷却しているにも係わらず日中は過熱警告が出たままだ。実際に手で触ると熱く、ドライブレコーダーの耐久性を考えると大丈夫かと懸念してしまう。

その予感は的中してしまい、車内の温度が暑いと感じるレベルから痛みへと変わろうかという温度では熱に耐えられずにドライブレコーダーは録画を停止してしまった。幸い、ケースファンは12Vタイプのため、ソーラーパネルを12Vタイプに変えてしまえば簡単に冷却能力の向上が見込める。

12Vのソーラーパネルに交換

そこで、本来は別の用途に使う予定だった12Vのソーラーパネルを急遽こちらで使うことにした。12Vタイプはサイズが倍近いサイズのため、背面のみプラダンを利用してバックプレートとして使用した。後は、カーボンシートでプラダンとソーラーパネルを張付け一体化させている。

ソーラーパネルの縁部分はシートが剥がれやすいが、ダイノックプライマーを塗布してやれば密着して剥がれることが無くなった。これを6Vのソーラーパネルと交換して運用してみたところ、ドライブレコーダーは過熱警告を表示するものの録画を続けていたのだが、これでも日当たりによっては録画が停止することがあり、過熱対策については別のアプローチで対策を追加する必要性に迫られた。

ただし、過熱状態からの復帰は6Vのソーラーパネルを使用した時とは比べものにならないほど早く、エアコンをかけて数分もしないうちに録画が可能な状態に冷却されるため、走行中の常時録画については問題が無いと言える状態にまで改善している。

今のところ有効な対策案が出てこないが、引き続き駐車監視モードの過熱対策については検討していく予定だ。

撓み改良

■記事公開後日の追加対策

炎天下の暑さで両面テープが剥げてプラダンが撓んできたので、対策として番線にコルゲートホースを被せた物をルームミラーのアームに巻き付け、プラダンをフロントガラス側に押し込む力がかかるようにして設置をした。

これで、撓みや両面テープの剥離は改善できたが、見た目が今ひとつなので、その点は改善の余地有りといったところ。予めプラダンの縁に沿って番線を這わせ、カーボンシートで一緒に覆ってしまう方法を思いついたが、次の機会に持ち越すことにした。