補充電システム

ドライブレコーダーの駐車場監視モードを24時間稼働させ続けることを目標に、50WのソーラーパネルMPPTチャージコントローラーを最終的に導入することとなったが、発電できない程の天候不順が続くとバッテリーの残量は漸減していく。

梅雨時期に3日連続1日10Whという発電量を記録した際、ドライブレコーダーは電圧降下のため録画を停止してしまい補充電が必要となったのだが、走行充電は非効率だし、青空駐車のため降雨の中でボンネットを開けて鉛バッテリー充電器で充電という訳にもいかない。

そこで、前から考えていた補充電用システムをZ33に組み込むことにした。

■鉛バッテリーの充電を鉛バッテリーで

今回の補充電システムは一般的な補充電システムとは違う。というのも「車内で充電システムを完結」させるという特殊なシステムだからだ。一般的に自動車や二輪用として取り扱われているバッテリー充電器は100V電源を必要とするため、車内で完結させることができない。

今回は、そんな「車内で充電システムを完結」させるため以下の条件を満たす物を用意することにした。

・車内に設置が可能(いたずら対策・防水)
・電源を内包する(車内に設置可能)
・持運び可能
・準備や片付けの負担は最小に

今までドライブレコーダーの駐車監視モードでスターターバッテリーが弱ってきた際は、100V電源の鉛バッテリー専用充電器でボンネットを開けて直接バッテリーに接続してから補充電していたが、これは毎回面倒だし、青空駐車なのでいたずらされないか心配になる。

そのため、車内に設置して補充電ができるようにすることは必然だったが、そうなると、電源は何らかのバッテリーを電源として鉛バッテリーを充電するものということになる。そんな、都合の良いものがあるのだろうかと探してみたところ、意外なジャンルからそれは出てきた。

ホビー向けの万能充電器

それは、ホビー向けの万能充電器だった。近年ではラジコンや電動ガン向けとして利用が進んでいるリチウム系バッテリーはもちろん、旧来から存在するニッケル水素やニカドといった各種ホビー向けのバッテリーを充電できる万能充電器だ。

実はこのホビー向け充電器、鉛バッテリーを充電できるモデルが多数存在する。というのも、ホビー向け充電器はラジコンユーザーをメインターゲットとしているが、ラジコンは電源が確保しにくい屋外で使用することが多いため、そういった場所でも充電ができるように、鉛バッテリー等を電源として各種ホビー向けバッテリーを充電することができる。

2電源対応

当然、遊んだ後は電源として使用した鉛バッテリーを充電する必要があるが、家に帰って100V電源から鉛バッテリーをホビー向け充電器で充電することができるので、別に充電器を必要するはない。

ということは、鉛バッテリーを電源として鉛バッテリーを充電することができるかもしれないと考えついたのだが、ネットで探してみたところ実例は見つけることができなかった。普通に考えて、鉛バッテリーから鉛バッテリーを充電することは非効率なので需要が無いからだろう。

パーフェクト・ネオV2

だが、可能性は十分にあるため、実際にホビー向け充電器(パーフェクト・ネオV2)を取り寄せて実験をしてみることにした。

鉛バッテリーで鉛バッテリーを充電

結果から言うとこの目論見は当った。ホビー向け充電器は鉛バッテリーで鉛バッテリーを充電できるのだ。正確に言うと、鉛バッテリーを含み、指定された直流電圧と要求される電流を安定して供給できる電源なら、安定化電源だろうが、ACアダプターだろうが、リチウム系のバッテリーだろうが何でも電源として使える。さすが万能と名がつくだけのことはある。

だが、車内に放置することを考えると電源にリチウム系のバッテリーは使いたくない。ホビー向け充電器には電源側のバッテリーを保護する過放電防止機能が付いているが、フェイルセーフが働かず過放電をすればリチウム系バッテリーの発火リスクは高くなる。

シールドバッテリー

そこで、電源はこちらの電動ガン用に用意しておいたシールドバッテリーを流用する。

■電源はシールドバッテリー

シールドバッテリーを電源として選んだのはいくつか理由がある。1つは小型のものが多く入手性が良好という理由からだが、もう1つは使用時や保管時に爆発や発火・発煙の危険性を心配しなくとも良いという点だ。

鉛バッテリーは充電時に酸素と水素ガスが発生する。ここに点火源があれば爆発するため、ガスが滞留してバッテリー充電中に爆発事故を起すことが希にある。だが、シールドバッテリーは密閉されているため、充電時の酸素と水素ガスが極めて漏れ出しにくい構造になっている。そのため、充電時に強制換気などの爆発対策をする必要がなく、屋内で充電するには最適といえる。

また、シールドバッテリーを含めて鉛バッテリーはリチウム系バッテリーよりも遙かに安全に使える。極端な過電流で充電すると大量に発生したが酸素と水素ガスによってケースが破裂することが希にあるが、過放電で寿命が短くなることはあっても発火に繋がることはないため、使用時に車内に放置しても安心だ。

デメリットとしては重量があるのと、容量が使用方法により変化する点だろう。今回用意したLONG製のWP12-12は両手に納まるサイズだが4.3kgと重たい。

バッテリーの容量はWP12-12では12Aの容量になるが、これは1.2Aの電流で放電し続けた際の容量(10時間容量)であり、1.2Aを超えて放電すると容量は減っていく。10倍の12Aを放電すると容量は5.4Aまで低下してしまう仕様になっている。

とはいえ、12Aというような電流を流すようなレベルで充電をすることはない。鉛バッテリーは一般的に0.1C充電が望ましいとされているため、そこまで電源側のシールドバッテリーを酷使することはない。
※Cはバッテリー容量(A)10Aのバッテリーなら1C=10A・0.1C=1A

Z33に搭載しているスターターバッテリーは48Ahなので0.1Cは4.8Aとなるが、充電電流は1A程度に抑える。こうすることで、極力電源側のシールドバッテリーを容量に近くなるように使用する。もちろん充電に時間がかかるが、車内に放置しておけば良いので時間は十分に有る。

1Aの充電電流

WP12-12でどれだけ補充電が可能か計算したところ、1Aの充電電流でおよそ12Ah※だが、これ以上の電流となるとシールドバッテリーの容量が減っていく。これは、バッテリーの充電は水と同じく圧が高いところから低いところへ流れる特性が遠因だ。
※暗電流分は含まず算出

もし、鉛バッテリーを並列接続して弱ったバッテリーを補充電した場合、ある程度は補充電できるが、両鉛バッテリーが同じ電圧になったとき均衡して充電は止まる。そのため、この方法では鉛バッテリーを満充電にすることはできない。

そこで、充電器を通すことで電源側のバッテリーから供給された電圧を昇圧し、満充電になるまで電流を供給することができる環境を用意したという訳だ。だが、代わりに昇圧のためのエネルギー分はロスしてしまう。

実測では1.3Aの充電電流で電源側のバッテリーは最大で1.7Aを供給していたので、効率は約77%になる。残りの約23%は昇圧や充電器の制御のために消費されるロス分だ。

このため、1Aで充電すると電源側のバッテリーは1.3Aの電流を放電することとなり、WP12-12の場合だと12Ahを若干切る程度の放電量となる。これ以上の充電電流となると充電時間は早くなるが、供給できる量は減っていくことになる。
※実際は充電器側の供給電圧カットオフ機能の設定により変化する

もちろん、重くなるのを気にしないのであれば、容量の大きなシールドバッテリーを使って供給電流を上げるという方法もあるだろう。

■バッテリー充電の面倒を最小限に

シールドバッテリーを電源としてホビー向け充電器を使いスターターバッテリーを充電するという方法に案は固まった。しかし、このままでは車内から充電することはできない。そこで、Z33にあるものを取り付けることにした。

防水タイプのシガーソケット

そのあるものとは、シガーソケットだ。異物や水が入り込まない防水タイプのシガーソケットをラゲッジの内装に取り付け、ヒューズボックスから取り出した常時電源に繋ぐことにした。

常時電源は常にバッテリーに接続されている配線のため、そこから高い電圧を掛けるとバッテリーを充電することができる。だが、途中のヒューズや配線の限界を超えた電流を供給することはできない。

ヒューズ電源

私の環境ではソーラーチャージャーとスターターバッテリーを繋ぐため、8Aのガラス管ヒューズ付きの電源取り出しヒューズを使ってラゲッジまで配線している。電源取り出しヒューズの仕様では7.5Aまで電流を供給できることになっているので十二分に余裕がある。

デメリットとしてシガーソケットは接続不良が出やすいのと、シガーソケットまでの配線が長く細いため、電圧降下が発生して充電効率が落ちてしまう点がある。充電環境としては完璧とは言えないが、低電流による補充電に使うには十分だろう。

■シガーソケット埋め込み

シガーソケットは内装に埋め込むことにしたが、充電専用として運用する訳ではなく、場合によっては電源の供給用として使うこともあるだろう。そこで、極力アクセスしやすいラゲッジに取り付けることにした。

Z33のラゲッジでアクセスしやすく、内装にシガーソケットを埋め込めそうな奥行きが有りそうな箇所といえばリア側の面しかない。

内装を剥がす

確認のためにラゲッジ後ろ側内装を剥がしてみることした。横側の内装はウェザーストリップを抜いて、内装をラゲッジ内側に引っ張り剥がしていく。

ラゲッジランプを取り外す

背面の内装は、最初にラゲッジランプを取り外す。内装はがしをカバーの短い端に引っかけて押し上げると外れるので、ソケットを抜いてランプとカバーを外しておく。

内装下部を車内側に引っ張る

ラゲッジの床面のシートとパネルをずらすか取り出しておき、背面の内装下部を車内側に引っ張り、ファスナーが外れたら上に引きあげて残りのファスナーを外すと剥がれる。

フレーム

内装を剥がすとフレームが見えてきたが、埋め込めそうな箇所はそれほど多くはない。

埋め込めそうな箇所

最終的に、内装の角度や奥行きを考慮してこの箇所に埋め込むことにした。

小さな穴を開ける

位置が決まれば内装にポンチ穴を打ち込みドリルで小さな穴を開ける。この箇所は埋め込むためのクリアランスが狭いため、ズレが生じないようにこの小さな穴にドライバーを通して中心の位置を正確に割り出す。

ホールソーで穴を開ける

中心が決まったらポンチ穴を開けてホールソーで穴を開ける。しかし予想していたよりも穴の位置がずれてしまったため、ホールソーで穴を開け直そうとしたら・・・

ひっかき傷が深くついた

ホールソーが暴れてひっかき傷が深くついてしまった。

カーボンシート

シガーソケットに付属するカバーで覆っても隠せない範囲だったので、バリを取り除きカーボンシートを貼り付けてごまかしておいた。

カーボンシートを貼り付け

改めて穴の位置を補修してシガーソケットを取り付ける。シガーソケットは背面からリング状のナットで締め付けて固定するのできつく締めておく。

付属のネジを取り付け

また、カバーの一部にはネジ穴が用意してあるが、そのままだと味気ないので付属のネジを取り付けておくことにした。

ネジを途中でカット

しかし、ネジで固定する訳でもなく、そのままだと周囲のケーブルを破損させる可能性が有るためネジを途中でカットしておいた。

ネジ先へ貼り付けて保護材に

ネジを取り付けたら干渉対策として両面テープをネジ先へ貼り付けて保護材にする。

ケーブルを縛り付ける

付属のヒューズ付きケーブルと接続したら、引っこ抜け防止のためシガーソケットの本体に結束バンドでケーブルを縛り付けておく。

12V扇風機を使ってテスト

車内に戻して配線をした後、通電しているかシガーソケット用の12V扇風機を使ってテストしてみたが、問題なく動作しているので内装を元に戻していく。

常時電源兼充電用シガーソケット

これでラゲッジに常時電源兼充電用シガーソケットが追加された。供給電流と充電電流は最大7.5Aに制限されるが、それさえ守れば有効に使えそうだ。

意味があるかと問われると微妙なところだが、余っている18Wのソーラーチャージャーとチャージコントローラーを取り付けて、発電量をさらに向上させるといった使い道もできそうだ。

■シガーソケット充電ケーブル作成

接続する配線

Z33に常時電源のシガーソケットが追加されたが、このままでは充電器に接続することはできない。いくら万能充電器と言われていても接続する配線がなければ充電は不可能だ。そこで、ホビー向け充電器とシガーソケットを接続する配線を作成することにした。

ディーンズコネクター

用意したのはシガーソケット(オス)とディーンズコネクターになる。ディーンズコネクターは元々ホビー向け充電器の接続に使われているため、ディーンズコネクターをシガーソケットにハンダ付けして専用の配線を作り上げる。

完成したのがこれ

完成したのがこれだ。これでホビー向け充電器から常時電源のシガーソケットを経由してスターターバッテリーを充電できる。

また、シガーソケット自体にガラス管ヒューズが入っているので、ヒューズを交換して充電時の過電流防止対策としても使うこともできるようになった。

■試験充電

Z33側の加工も終了して充電環境が整った。試験としてバッテリーを補充電してみることにしたが、そのままシールドバッテリーとホビー向け充電器を乗せるのでは素っ気ない。

アルミケースに収納

そこで撮影機材を入れていたアルミケース(コメリ アルミ工具箱SHK-195)に収納してみたのだが、これがバッテリーと充電器をピッタリ収納できるサイズだった。WP12-12か同サイズのWP14-12なら同じように収納が可能だ。

普段はこのアルミケースに収納しておき、必要に応じて車内に設置してスターターバッテリーを補充電する。

なお、ホビー向け充電器には電源となるバッテリーが過放電にならないように電圧カットオフ機能が搭載されているため、放置しても電源側のバッテリーが過放電で痛むことはない。

バッテリーを補充電

試しに電圧カットオフで充電が自動停止するまで補充電をしてみたが、スターターバッテリーは正常に充電できており、バッテリーや充電器、ケーブルの異常な発熱といったイレギュラーは発生しなかった。

この機能がついているため、車内に設置した後に放置しておけば、スターターバッテリーが満充電になるか、電源側のバッテリー電圧が指定電圧に下がるまで充電し続ける。今、まさに要求通りの補充電システムが完成した。

だが、残念なことに梅雨が想定よりも早く明けてしまい、50WソーラーパネルとMPPTチャージコントローラーによる発電が絶好調のため補充電をする必要が無くなってしまった。今後、この補充電システムが本格的に運用されるのは冬時期になるだろう。